◆法秩序内部での整合性がとれない
さらに、インボイス制度は、消費税法上定められた免税事業者の制度と矛盾するものであり、法秩序内部での整合性がとれません。
免税事業者の制度の趣旨は、本来、売上が低い零細な事業者にとって、消費税の納税事務にかかる労力とコストが重く酷であるという配慮にあったはずです。
しかし、インボイス制度の導入により、多くの免税事業者が、課税事業者になることを事実上強制されます。それにより、上述の通り、これまで負わなかった以下の三重の負担を強いられることになるのです。
【免税事業者が課税事業者になることによる三重苦】
・消費税の納税義務を負う
・消費税の計算の手間・コストがかかる
・インボイス発行の手間・コストがかかる
これでは事実上、免税事業者の制度趣旨が没却されてしまいます。
以上のように、インボイス制度は、このまま導入されると、従来の免税事業者にとってきわめて過酷な結果を招くことが明らかです。
「2023年度税制改正大綱」で「負担軽減策」が発表されたが…
さしもの与党・政府も、「2023年度税制改正大綱」において「負担軽減策」を講じることを発表しました。その内容は、以下の2つです。
【2023年度税制改正大綱における「救済措置」】
・免税事業者が課税事業者に転換した場合の納税額を売上税額の20%とする(転換から3年間)
・年間売上高1億円以下の事業者は、1万円以下の取引についてインボイスなしで仕入税額控除できるようにする(制度導入から6年間)
なお、これらに伴い、インボイス登録期限(2023年3月末日)を実質的に9月に延期する措置がとられました(詳しくは「朗報!? 『インボイス登録』の申請期限が実質9月まで延期…その概要と注意点とは」をご覧ください)。
しかし、これらはいずれも救済措置としての実効性が乏しいといわざるをえません。
第一に、納税額を売上税額の20%とする措置は、簡易課税制度との関係が不明瞭です。
特に、簡易課税制度において納税額が売上税額の20%以下の「卸売業」(10%)と「小売業、農業・林業、漁業」(20%)にとっては、なんら救済措置になっていません。
第二に、1万円以下の取引についてインボイスなしで仕入税額控除を認める措置は、事業者同士の取引を想定すると、効果がきわめて限定的です。しかも、1万円以下の取引とそれ以外の取引を分けて計算するのはかえって面倒で、余計な負担が発生します。
個人事業主のインボイス登録が進まない背景には、インボイス制度によって事務負担や費用がかかるだけでなく、上述した制度の欠陥とそれに対する不満があるのは間違いありません。
インボイス制度の欠陥は明らかであり、それが解消されないまま予定通り10月に施行を強行すると、混乱と将来への禍根を残すことになりかねません。政府・国会には、取引社会の現実を直視したうえで、制度の延期、抜本的な見直しも視野に入れて、柔軟な対応を行うことが求められます。
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