インボイス登録とは
消費税のインボイス制度は、消費税の税額の計算で使用する請求書について、「適格請求書」(インボイス)という決まった形式のものでなければ認めないというものです。
すなわち、消費税の税額の計算方法は、原則として、「商品・サービスを販売した際に受け取った消費税相当額」から、「仕入れの際に支払った消費税相当額」を控除するというものです。これを「仕入税額控除」といいます。
これは、「仕入れの際に支払った消費税相当額」について二重課税を防ぐためです。
そして、インボイス(適格請求書)は、「仕入れの際に支払った消費税相当額」を証明する資料として必要とされるのです。
インボイスを発行できるのはあらかじめ「インボイス登録」を行う必要があります。インボイス登録ができるのは「課税事業者」のみであり、年間売上1,000万円以下の「免税事業者」はインボイスを発行する資格がありません。
つまり、事業者が消費税の計算上「仕入税額控除」の計算をするためには、インボイス登録をした「課税事業者」と取引しなければならないということです。
このことにより、従来の「免税事業者」は、取引を打ち切られたり、値引きを求められたりすることになり、それを避けるには「課税事業者」になるしかありません。
そうすると、実質的な手取りが減るうえ、消費税の納税とインボイス発行の手間とコストがかかるという二重の負担を抱えることになります。
まさしく弱いものいじめであり、この点が、インボイス制度に対する批判が強いところです。
なお、この批判に対し、従来、免税事業者はいわゆる「益税」により不当な利益を得ていたのだから、それを解消するインボイス制度は当然の制度であるという有力な反論があります。しかし、この「益税叩き」は、消費税のしくみと取引の実情についての無理解・誤解に基づくものです。
詳しくは2022年11月24日の記事「フリーランス・零細事業者いじめのインボイス制度…『負担軽減策』の概要が判明!その中身と問題点とは」をご覧ください。
インボイス登録の申請期限は2023年3月末日だったが…実質延期に
インボイス登録の期限は2023年3月末日に設定されていました。しかし、東京商工リサーチの分析によると、2022年11月末時点で登録率は全体で44.6%、個人事業主の登録率は19.0%にとどまっています。
その背景には、インボイス登録に対応する体制を整備する時間と費用がかかることに加え、インボイス制度に対する批判が強いことが挙げられます。
さしもの政府・与党も、批判だけならまだしも、さすがに、現実にインボイス登録が進まないとなると無視することはできなくなったようで、2023年税制改正大綱について、以下の措置をとることを発表しました。
・免税事業者が課税事業者に転換した場合、納税額を「売上税額の20%」とする(転換から3年間)
・年間売上高1億円以下の事業者は、1万円以下の取引については仕入税額控除においてインボイスを不要とする(制度導入から6年間)
これら「救済措置」の詳細と問題点については「フリーランス・零細事業者いじめのインボイス制度…『負担軽減策』の概要が判明!その中身と問題点とは」をご覧ください。
このことに伴い、インボイス登録の期限が実質上、2023年9月まで延期されることになったのです。2023年度税制改正大綱には以下のように記載されています。
すなわち、インボイス登録の申請期限である2023年4月1日以降に登録申請を行う場合、従来は「期限までに登録申請書を提出できなかったことにつき困難な事情」を記載しなければなりませんでした。それが、記載不要ということになったのです。