(※写真はイメージです/PIXTA)

だれもが不安を感じている老後資金確保の問題。年金受給額を増やす方法として受給開始時期の先送りがありますが、「早死にしたら損だ」と考えて決断できない人も多いようです。しかし、公的年金の先送りには、その点を踏まえてもなお、実施を検討すべき大きなメリットがあると考えます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

公的年金は「老後資金の最強の柱」

公的年金は、標準的なサラリーマン夫婦で毎月22万円、自営業者夫婦でも毎月13万円(年金保険料を毎回支払っていた場合)受け取れます。老後資金を考える際には非常に重要な収入ですね。

 

しかも、どれほど長生きしても最後まで受け取れますし、インフレが来ても原則としてインフレ分だけ受取額が増えるので、老後資金の2大リスクである「長生き」と「インフレ」にきっちり対応してくれる、頼もしい存在です。

70歳まで受け取りを待てば、毎回の受取額は42%増

年金は、原則として65歳から受け取るわけですが、60歳と75歳の間で受取開始時期が自由に選べます。当然ながら、早く受け取り始めれば毎回の受取額は少なくなり、待ってから受け取れば、毎回の受取額が多くなります。

 

たとえば、70歳まで待ってから受け取り始めると、65歳で受け取り始めた場合と比べて毎回の受取額が42%増えることになります。

 

標準的なサラリーマン夫婦であれば、毎月31万円の年金収入が見込めるわけですから、老後の生活は安泰と言ってもいいでしょう。少子高齢化で年金支給額が少しずつ減らされていくかもしれませんが、これだけあれば、多少減らされても大丈夫ですね。

 

反対に、早くから受け取り始めてしまうと毎回の受取額が減らされてしまうので、長生きとインフレのリスクに対する備えが心許なくなってしまいます。

 

当面の生活資金が工面できない場合は仕方ないかもしれませんが、老後のために蓄えを持っているのであれば、あるいは定年後も働いて生活費が稼げるのであれば、少なくとも65歳まで、できれば70歳までは待ちたいところです。

 

ちなみに、「少子高齢化や財政赤字などを考えると将来は年金財政が破綻しそうだから、受け取れるうちに受け取っておこう」と考える人もいると思いますが、そういう人には2つアドバイスがあります。1つは拙稿『公的年金「いずれ形ばかりの存在になる」は本当か?…経済評論家が解説』を読んだり、専門家の話を聞いたりして、年金財政が破綻しないということを理解して下さい。

 

それでもなお「年金財政は破綻するに違いない」と思う人は、全財産をドルに替えましょう。年金が破綻すると生活保護の申請が殺到して財政が破綻し、日本政府の子会社である日銀が発行している紙幣は紙屑になり、皆が円をドルに替えることでドルが高騰するでしょうから。

計算では、平均寿命まで生きれば「おトク」に!

年金は保険ですから、老後の安心が最も大事なのですが、損得も重要ですね。その意味では、70歳まで待ってから受け取る場合には「82歳まで生きれば得」ということになります。平均寿命まで生きれば得だということなので、70歳までの生活費が確保できる場合は、ぜひ前向きに検討してみましょう。

 

ただ、いいことばかりではありません。人によっては配偶者が加給年金を受け取れなくなる、70歳以降の所得が増えて所得税率が高くなる、「住民税非課税世帯への優遇措置」が受けられなくなる…といったことがあるかもしれません。

 

したがって、そのあたりのことをファイナンシャル・プランナーなどに相談した方がいいかもしれませんね。

 

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