(※写真はイメージです/PIXTA)

日本では非正規雇用の方が増えています。そのような働き方をしている方々のなかには、収入が少ないために結婚を先送り、あるいはあきらめるケースも多いと聞きます。しかしそれは、経済的な観点から見て本当に「よい選択」なのでしょうか? 経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

結婚は「お金のため」ではないけれど…

結婚はお金のためにするのではありません。そんなことは筆者ももちろん理解しています。しかし、「結婚したい人がいるけれど、自分はお金がないから無理だろう」と考えているなら、「結婚した方が金銭面でマシになるかもしれない」ということは知ってほしいと思います。

 

さらにいえば、「お金がないから婚活をあきらめている」という人も、「お金がない同士で結婚すれば、生活がマシになるかもしれない」ということは知ってほしいですね。同居すれば家賃が半分ですむ、といったこともありますが、日本の公的年金制度が結婚したほうが有利なしくみであることも重要です。

 

まさか少子化対策のために「結婚すると年金制度上のメリットがあるから結婚しなさい」と厚生労働省がインセンティブを提供しているわけではないでしょうが(笑)。

年金制度、「サラリーマン」「それ以外」で大きく違う

本稿を理解するためには年金制度をある程度知っておく必要があるでしょうから、初心者向けに解説しておきます。

 

日本の公的年金は2階建てになっていて、1階部分は全員が加入する国民年金、2階部分はサラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む。以下同様)が加入する厚生年金です。つまり、サラリーマンは自営業者等々よりも老後に受け取れる年金額が多いのです。

 

1階部分は国民を3つのグループに分けています。サラリーマン、サラリーマンの専業主婦(専業主夫を含む、以下同様)、それ以外(自営業者、非正規労働者、学生、失業者等々)の3つです。

 

サラリーマンは、年収の1割弱を保険料として払います(給料からの天引き)。サラリーマンの専業主婦は、保険料を払う必要がありません。それ以外は年間20万円程度の保険料を自分で払い込む必要があります。

 

1階部分の国民年金は、払い漏れがないかぎり、老後に全員同額で6.5万円が毎月受け取れます。2階部分の厚生年金は、支払った保険料が多いほど、老後に受け取れる年金も多くなります。

非正規労働者でもサラリーマン並みに扱われる方法あり

正社員になりたくてもなれず、非正規労働者として生計をたてている人が大勢いるようです。とくに、就職氷河期に学校を卒業して就職活動がうまく行かなかった人に多いようですね。

 

そうした人でも、働き方を工夫することで、年金制度上はサラリーマンと同様の扱いが受けられる制度があります。非正規労働者でも年金制度上はサラリーマンとみなされるわけです。

 

そのためには条件をクリアする必要がありますが、その条件とはざっくり「毎週30時間以上働く」もしくは「大企業で毎週20時間以上働く」といったものです。実際には複雑な条件なので、就職前に会社に問い合わせておいた方がいいかもしれませんね。

サラリーマンの年金面、自営業者等より「おトク」

サラリーマンとして扱われると、厚生年金に加入することになり、老後に受け取れる年金額が増えるのですが、それだけではなく、毎月支払う年金保険料も安くなる場合が多いのです。

 

サラリーマン以外は、毎年20万円程度の国民年金の保険料を支払うわけですが、サラリーマンは年収の1割弱の厚生年金保険料を支払えばいいのです。保険料自体は年収の2割弱なのですが、半分は勤務先が払ってくれるので、自分が払う保険料は安いのです。

 

したがって、非正規労働者として働く場合でも、年金制度上はサラリーマンとみなされて厚生年金に加入できる働き方をするほうが得なのです。年収が200万円程度までであれば、保険料が安くすみますし、老後の年金額も少しは増えます。年収がそれ以上であれば、年金保険料は若干増えますが、老後に受け取れる年金額が大幅に増えますから。

 

そして実は、厚生年金に加入すると大きなメリットがもうひとつ受けられるかもしれないのです。それは、サラリーマンの専業主婦は年金面で優遇されているからです。

サラリーマンの専業主婦は、年金面で優遇されている

上記のように、サラリーマンの専業主婦は年金保険料を払う必要がないのに、老後は年金が受け取れます。これは自営業者の配偶者、非正規労働者の配偶者、独身者等と比べた大きなメリットです。

 

したがって、独身の非正規労働者同士が結婚して、どちらかが厚生年金に加入すると、2人合計の保険料が大幅に安くなるのです。

 

サラリーマンの専業主婦がそれ以外の人より大幅に優遇されているのは理不尽なので、制度を変えるべきだと筆者は強く主張していますが、それはそれとして、利用できる制度があるならば、それは活用すべきでしょう。

 

読者が本稿を読んで結婚したあと、筆者の主張通り制度が廃止になってしまったら、どうかご容赦ください(笑)。

 

本稿は以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「幻冬舎ゴールドオンライン」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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