(※写真はイメージです/PIXTA)

だれもが不安を感じている老後資金確保の問題。年金受給額を増やす方法として受給開始時期の先送りがありますが、「早死にしたら損だ」と考えて決断できない人も多いようです。しかし、公的年金の先送りには、その点を踏まえてもなお、実施を検討すべき大きなメリットがあると考えます。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

火事にならなければ「火災保険は損」なのか?

年金の受け取りを70歳まで待った場合、81歳より前に死んでしまったら、損をしてしまいます。「そんなの嫌だから、年金は65歳から受け取る」「いや、もっと前から受け取る!」という人もいるかもしれません。

 

そうした人には、年金が保険だということをしっかり考えていただきたいと思います。保険というのは、皆が払った金を困っている人に渡すという仕組みです。

 

火災保険は、皆が保険料を払い、家が火事になって困っている人がそれを受け取るわけです。年金もそれと同じです。皆が保険料を払って、長生きして老後資金が底を突いて困っている人がそれを受け取るわけです。

 

家が火事にならなかったら保険料が損だから火災保険に加入しない、という人は少ないでしょう。それならば、年金も同じことですから、しっかり保険に加入しましょう。

 

現役時代に年金保険料を払わないというのは、保険に加入しないということです。65歳より前に年金を受け取り始めるというのは、保険の一部を解約して現役時代に支払った保険料の一部を64歳時点で返してもらう、ということです。

 

反対に、70歳まで待つということは、65歳から70歳までの5年間に受け取れるはずだった保険金を更に保険料として払い込んで大きな保険に加入する、ということなのです。

「健康的な生活へのインセンティブ」という考え方も

年金受取開始年齢が75歳まで選べるようになりましたので、長生きする自信のある人は75歳まで待つという選択肢も要検討でしょう。

 

70歳で受け取り始めた人は65歳開始の人と比べて毎回の受給額が1.42倍、75歳で受け取り始めた人は1.84倍になりますから、92歳まで生きれば待った方が得だ、ということになるからです。

 

70歳時点での自分の健康状態や医学の進歩状態を見てから決めればいいことなのですが、筆者は前向きに検討したいと思います。理由は2つです。

 

第1の理由は、年金が「長生きしている間にインフレが来て老後資金が底を突いてしまうリスク」に対する保険だから、損得のみで論じるのではなく安心の要素も重要だ、ということです。

 

第2の理由は、「長生きしないと損だ」と自分に言い聞かせることで、健康的な生活をするインセンティブが持てる、ということですね。それによって健康寿命が伸びるとすれば、金には代えられないメリットですからね。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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