「2023年度税制改正大綱」で4月からNGに
ところが、2022年12月23日に発表された政府の「2023年度税制改正大綱」によって、2023年4月以降、マイニングマシンを利用した節税スキームが、事実上封じられることになりました。
すなわち、「主要な事業」ではなくマイニングを行う場合で、かつ、「機械装置の管理の大部分を外部に委託している場合」については、2023年4月以降、中小企業経営強化税制(B類型)の対象外ということになりました。
これは、「手離れのよさ」が問題視されたと考えられます。すなわち、管理・稼働を完全に事業者に委ね、収益(暗号資産)のみを得るという点が問題視されたとみることができます。
なぜなら、2023年4月以降も、みずからマイニングマシンを管理し稼働させる場合は依然として中小企業経営強化税制(B類型)の対象から排除されないからです。
マイニングマシンを即時償却の対象から外すことの問題点
しかし、これはいかにも不当な狙い撃ちの感が拭えません。理由は以下の3点です。
1. 「節税」目的と新規事業目的は矛盾しない
2. マイニングマシン投資は事業リスクが高い
3. 「外部委託」は経営上の合理的な選択肢の一つにすぎない
これらは、マイニングマシン節税に対する「好悪」とは分けて考える必要があります。以下、解説します。
◆問題点1「節税」目的と新規事業目的は矛盾しない
第一に、マイニングマシン投資に「節税」の目的があったとしても、同時に、新規事業を行う目的も多かれ少なかれ併存しているという点です。
事業は一過性のものではなく、いったん始めたら、ある程度長期間にわたって継続することが前提です。即時償却だけを取り出せば一過性のものかもしれませんが、その後に事業を続けていかなければならないのです。
中小企業経営強化税制(B類型)の趣旨は、既存の事業に加え新たな収益を得るため新規事業に乗り出すことをサポートするというものです。そうだとすれば、「節税」の目的が併存していたかどうかを重視することには疑問があります。
◆問題点2|マイニングマシン投資は事業リスクが高い
次に、マイニングマシン投資においては、他の新規事業と同等かそれ以上の事業リスクを負うことになるという点です。
現状において、すべての人がマイニングマシンに将来性を見出しているわけではありません。しかも、過去に著しく高騰したいっぽうで、株式や不動産等の資産よりもさらに騰落が激しく、2022年に大暴落もありました。
他の新規事業を始めるときと同等、あるいはそれ以上に、将来の見通しが不透明であり、損をするリスクがあります。
このことからすれば、「手離れ」がよいからといって、単に不労所得を得るものと断じるには躊躇を覚えます。
◆問題点3|「外部委託」は経営上の合理的な選択肢の一つにすぎない
さらに、外部委託は経営上の合理的な選択肢の一つにすぎないということが挙げられます。
マイニングマシンは特殊な技術が集積された複雑な構造の機械であり、みずから操作するのは合理的ではありません。むしろ、維持管理・稼働をマイニングマシンの操作に通じた専門業者に委ねるのが合理的であると考えることもできます。
事実、税制改正大綱においては、マイニングマシンと「コインランドリー設備」以外について、外部委託する場合を、中小企業経営強化税制(B類型)の対象外としてはいません。
マイニングマシンとコインランドリー設備以外の設備でも、維持管理・運用を外部委託するケースが観念できることを考慮すれば、恣意的な「狙い撃ち」の面があることを否定できません。
まとめ
以上を考慮すると、税制改正大綱においてマイニングマシン投資を中小企業経営強化税制(B類型)の対象外とすることは、いかにも、恣意的な狙い撃ちの感が拭えません。
仮想通貨およびマイニングマシンに対する好悪や「節税」の是非はともかく、税制のあり方としては、公平性・公正性の観点から疑問があります。政府・与党の税制に対する考え方に危惧を抱かざるをえません。
「コインランドリー節税」についても類似の問題があります。2022年12月26日の記事「税制改正大綱で『コインランドリー節税』潰し…『節税憎し』の勇み足か!? その正当性を問う!」もあわせてご覧ください。
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