(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年12月16日に発表された与党の「2023年度税制改正大綱」において、いわゆる「コインランドリー節税」に網がかけられることになりました。しかし、その根拠となってきた「中小企業経営強化税制」の制度趣旨からすると、単なる「節税憎し」の一念からの勇み足ではないかという疑念が湧きます。本記事で検証します。

コインランドリー投資の基本のしくみとメリット

税制改正大綱の内容を紹介する前提として、まず、コインランドリー投資とはどのようなものか、どんなメリットがあるとされてきたのか、解説します。

 

コインランドリー投資とは、コインランドリーに数千万円かけて投資し、オーナーになることをいいます。

 

主に以下の4つのメリットがあるといわれ、法人の「決算対策」や富裕層の「節税対策」として人気があります。

 

1. 投資額の70~80%を即時償却できる

2. 「手離れ」がよい

3. コインランドリー市場には将来性がある

4. 法人経営者の「退職金」代わりに活用できる

 

◆メリット1|投資額の70~80%を即時償却できる

4,000万円~5,000万円程度を投資したら、「中小企業経営強化税制」に基づき、その70~80%を占める機械設備の代金について「即時償却」が認められます。

 

対象となる機械設備は、洗濯機、乾燥機、非常用ガスバルク等です。

 

たとえば、投資額4,000万円だとすると、うち3,000万円前後の額について即時償却が認められるという計算になります。これによって、本来「減価償却」による処理をすべきところ、初年度に一気に償却し、まとまった経費を計上することができます。

 

償却の額自体は通常の減価償却と同じなので、厳密には「節税」とはいえません。しかし、一気に償却することにより初年度の税負担が大きく抑えられ、当座の手持ちのキャッシュを厚くすることができるのです。

 

なお、初年度における投資額の10%の「税額控除」を選ぶこともできます。こちらのほうが計算上は即時償却よりも得ということになります。しかし、即時償却を選ぶほうが多くなっています。なぜなら、即時償却には、世の中が先行き不透明ななか、当座の手持ちのキャッシュを潤沢にできるメリットがあるからです。

 

◆「手離れ」がよい

また、ランドリーの運営を専門の業者に委託すれば、自ら手を煩わせることなく、収益だけを獲得することができ、「手離れ」がよいという魅力もあります。

 

◆コインランドリー市場には将来性がある

さらに、近年のコインランドリー市場の急激な伸びも背景にあります。共働き世帯の増加によるライフスタイルの変化、ゲリラ豪雨等の増加のほか、ダニ等のアレルギー対策にコインランドリーの乾燥機が有効だということが知られつつあります。

 

様々な要素があいまって、コインランドリーの需要が増加しています。首都圏だけだと飽和状態に近づきつつあるものの、全国的にみれば、まだ伸びしろがあるといわれています。

 

ただし、将来性が比較的有望とはいえ、リスクはあります。たとえば、「【毎月40万円が消えていく】コインランドリー投資で見た赤字地獄」という動画では、コインランドリー投資に失敗して多額の負債を抱えた事例が紹介されています。

 

あくまでも立地条件が良好であれば、継続的かつ着実に収益を得ることができる可能性が高い事業であるといえます。

 

◆法人経営者の「退職金」代わりに活用できる

法人の場合、最終的に、社長の退職金代わりに「現物支給」をする方法もあります。すなわち、経営者が勇退する場合に法人からランドリーを退職金代わりに現物支給すると、「退職所得」と扱われ、所得税・住民税の負担が軽くてすみます。

 

そもそもランドリーの評価額自体が「法定耐用年数」を経過していれば相当低くなっています。また、洗濯機や乾燥機は機械としての寿命が長いため、長期間にわたって収益を生み続けてくれます。

 

これらのことから、近年、法人の「決算対策」、富裕層の「節税対策」として人気があり、広く活用されてきていたのです。

 

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