「孫が来るのは嬉しい。でも…」
「来るのは嬉しいのよ。でもね、終わったあとがしんどくて」
そう語るのは、地方都市の団地で一人暮らしをしている久美子さん(仮名・71歳)です。夫を亡くして8年。年金は月約17万円で、貯蓄を取り崩しながら生活しています。
娘夫婦は車で40分ほどの距離に住み、小学生の孫2人を連れて月に1〜2回訪ねてきます。
「懐いてくれているし、来るのを楽しみにしていたんです」
しかし、ここ数年、その気持ちは少しずつ変化していました。孫が来る日は、朝から準備が始まります。掃除、布団干し、食材の買い出し。
「子どもが好きそうなものを買っておこうと思うでしょう。お菓子とか、ジュースとか、夕飯のおかずとか」
来訪1回あたりの食費や雑費は3,000〜5,000円ほど。頻度が増えると月1万円を超えることもありました。さらに負担は家事だけではありません。
「小さい子って元気だから、家の中で走るし、物も散らかるし。帰ったあとの片付けが大変で」
翌日は腰痛が悪化し、通院が必要になることもありました。
当初は「来てもいい?」と確認があった娘夫婦ですが、次第に連絡は簡略化されました。
「土曜行くね」
前日のLINE一文だけで決まることも増えました。
「断る理由もないし、楽しみにしていると思われているから」
久美子さんは予定を調整しながら迎える準備を続けていました。来訪が3週続いた頃、久美子さんは娘に、遠慮がちにこう伝えました。
「今週はちょっと体調が…」
娘は驚いた様子でした。
「え? もしかして無理してたの?」
久美子さんは初めて打ち明けました。
「嬉しいのは本当。でもね、お金も体も、ちょっと大変で」
娘は沈黙し、こう言いました。
「そんなふうに思ってたなんて、気づかなかった」
