ポイント1|「税金を減らせばいい」というものではない
1つめのポイントは、決算対策はただ「税金を減らせばいい」というものではありません。税金を減らすこと=「節税」だと勘違いしている経営者の方は多いのです。
決算対策にもいろいろあり、会社の状況に応じて「向き・不向き」があります。決算対策はあくまでも経営の一環ですので、1年度だけでなく最終的に会社にとってプラスになるかをシビアに検討する必要があります。
すなわち、決算対策・節税とよばれる方法の多くは、まとまった額の「損金」を計上するものなので、必然的にある程度の支出、すなわちキャッシュの流出を伴います。
たとえば、税金を抑えたいからといって、必要もないのに備品を大量購入したり、交際費をたくさん使ったりすると、税金は抑えられますが、それ以上に貴重なキャッシュが流出してしまいます。
トータルでは明らかに「マイナス」です。
したがって、支出を伴う場合には、それに見合ったメリットを得られるか、すなわち「投下資本を回収できるか」を冷静に考える必要があります。
ポイント2|利益の発生状況により決算対策の種類が異なる
2つめのポイントは、利益がどのようにして発生したかによって、用いるべき決算対策の手段が異なるということです。
大きく以下の2つに分けられます。
・今期だけ突発的に大きな利益が発生した場合
・毎年度コンスタントに同程度の利益が発生する場合
それぞれについて説明します。
◆今期だけ突発的に大きな利益が発生した場合
まず、今年度だけ突発的に大きな利益が発生した場合です。たとえば、法人で所有していた不動産を売却して多額の売却益が発生したようなケースがこれにあたります。
この場合は、今年度だけ大きな損金が発生する方法が向いています。
たとえば、パソコン等の新たな備品を購入する必要があるのであれば、「少額減価償却資産の特例」が使えます。これは、1個30万円未満の固定資産について、総額300万円まで一気に損金計上できるものです。
また、新たな工場用機械設備を導入するなど、数百万円、数千万円規模の設備投資を行う場合には、中小企業経営強化税制(A類型・生産性向上設備)を活用すれば、「即時償却」を利用できます。これは、購入代金全額を一気に償却できるものです。
その他の方法としては、船舶や航空機の「オペレーティングリース」に数千万円~数億円出資してその60%~80%程度の額を一気に損金に算入する方法や、中小企業経営強化税制(B類型・収益力強化設備)に基づく「コインランドリー設備」の即時償却等が挙げられます。
ただし、コインランドリー設備については政府の「2023年度税制改正大綱」において、2023年4月以降、中小企業経営強化税制(B類型)の対象から外れることが内定しています。