「特別償却」と「税額控除」どちらを選ぶべきか
では、「特別償却」と「税額控除」のどちらを選ぶべきでしょうか。
結論からいえば、多くの場合「特別償却」をおすすめします。
たしかに、計算上は「税額控除」を選ぶほうがメリットが大きいように感じられます。すなわち、「特別償却」は費用計上のタイミングが早まるだけで、トータルの税額は変わりません。これに対し、「税額控除」は税金の額自体を減らすことができます。
しかし、設備投資を行うと当座の資金繰りが悪くなります。特別償却を選ぶことによって、当面の税負担を抑え、手持ちのキャッシュをより多く温存できます。
先行き不透明な今日、手持ちのキャッシュはできるだけ温存したほうが無難であるといえます。したがって、よほど経営の見通しが楽観的でない限りは、「特別償却」を選ぶことをおすすめします。
「2023年度税制改正大綱」における制度改定とは?
2023年度税制改正大綱において、制度改定として、以下の2つの制限が加えられることになりました。
(1)対象資産から、コインランドリー業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものを除外する。
(2)対象資産について、総トン数 500 トン以上の船舶にあっては、環境への負荷の低減に資する設備の設置状況等を国土交通大臣に届け出た船舶に限定する。
これらは別々の政策目的に基づくものです。以下、説明します。
◆コインランドリー業についての制限
まず、コインランドリー業に用いる機械装置については、以下の要件をみたすものを対象外とすることになりました。
・コインランドリーが主要な事業ではない
・業務のおおむね全部を外部に委託する
これは、実際の業務を外部委託して収益だけを得る場合、すなわち「みずから手を煩わせない場合」には税制優遇措置を認めないというものです。
背景には、コインランドリー経営が、「中小企業経営強化税制」による「即時償却」を目当てに広く「節税」の一環として行われてきたことがあります。そこで、「中小企業経営強化税制」とともに「中小企業投資促進税制」においても、「コインランドリー節税」に類するケースを対象外とすることになったのです。
しかし、いかなる目的があるにせよ、コインランドリー事業を行う場合に設備投資に相応のコストがかかり、かつ事業リスクが伴うことは他の事業と変わりません。
また、業務を外部委託するにもコストがかかることからすると、自らの手を煩わせる場合と区別する合理的な理由は乏しいといえます。
この点については、詳しくは「税制改正大綱で『コインランドリー節税』潰し…『節税憎し』の勇み足か!? その正当性を問う!」をご覧ください。
◆船舶に関する制限
次に、総トン数 500 トン以上の船舶(内航海運業の用に供される船舶)については、環境に配慮した設備の設置状況等を国土交通大臣に届け出た船舶に限定されることとなりました。
これは、カーボンニュートラルを促進する観点からの制限と考えられます。
まとめ
中小企業投資促進税制は、中小の事業者が、生産性向上等の目的のため一定の設備投資を行った場合に、「特別償却」または「税額控除」のいずれかを選べる税制優遇の制度です。
中小企業にとって苦しい経済状況が続き、消費税のみならず法人税・所得税等の増税までもが取り沙汰されるなか、経営を好転させるための設備投資にとって非常に有益かつ貴重な制度といえます。
2025年3月まで期限が延長されることが決まっており、積極的に利用することをおすすめします。
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