仕事と配偶者両親の介護に追われ…自身の父親は放置気味に
近年では、日本国民が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や、「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などから「働き方改革」が推進されている。
各企業も努力を重ねているものの、実現はなかなか厳しい模様で、時間に余裕がある就労者ばかりではない。とくに40~50代の場合、親の介護や子育てが重なりがちだが、一方で会社での責任も重く、家族のケアに注力できる人ばかりではないだろう。
「静岡の実家にひとり住まいの父のことで、後悔しています…」
そう語るのは、都内在住の会社員の鈴木さん(仮名、50代)だ。5年前、70代の母親が死去してから、80代の父親がひとり暮らしをしていた。鈴木さんには妹がいるが、配偶者の仕事の都合で、10年近く海外在住だ。
issin株式会社が20代〜70代の男女に行った『高齢の親の健康と生活に関する調査』によると、親のことで気がかりなことのトップは「健康状態」で27.0%。「介護が必要になる可能性」16.0%、「認知症の兆候・認知機能の低下」14.6%と続く。
【親のことで気がかりなこと】
1位「健康状態」…27.0%
2位「介護が必要になる可能性」…16.0%
3位「認知症の兆候・認知機能の低下」…14.6%
4位「実家の掃除や片付け」…8.3%
5位「詐欺対策や防犯」…8.2%
6位「財産管理」…5.7%
7位「精神的なストレスや鬱」…5.6%
「父の様子を見に行きたくても、多忙で時間が取れず…。平日は残業も多く、土日はヘトヘト。それに、一昨年から近居する妻の両親の介護が始まり、その手伝いもあります。なかなか自分の父のことまで手が回らなくて…」
鈴木さんの父親は元公務員で、年金は月額およそ22万円。高齢者が持ち家でひとり暮らしするには十分だといえる。また、父親はまじめな性格で、飲酒の習慣もない。
「父は毎朝キッチリ7時に起きて歯を磨き、味付け海苔と納豆でご飯を食べます。私が知っている限り、50年以上この生活です」
「掃除や洗濯は、週1回、家事代行サービスに来てもらい、昼と夜は、自分で弁当を買ったり、出前を取ったりしていると聞いています」
鈴木さん自身も、月に1回程度は父親と電話をしているが、とくに変わった様子は感じられなかったという。
「父と直接会ったのは2年前の夏です。実家に2泊ぐらいしましたが、母が亡くなったあとに不用品を整理しており、寝具は父のものしかありません。リビングのソファで寝ましたが、エアコンで冷えて風邪を引いたうえ、腰まで痛くなってしまい…。帰りの車の運転がつらかったです」
とはいえ、本人は至って健康そうで、鈴木さんの印象は〈これなら当分ひとりでも大丈夫〉というものだった。