「米ドル安の再燃」の可能性はあるのか
ここまで、先週の動きのなかで米ドルが買い戻された背景について確認してきました。ただ、6日のISM非製造業景気指数の悪化を主なきっかけに、米ドルは急落となりました。そこで再び米ドル安拡大に向かうかについて考えて見たいと思います。
ISM非製造業景気指数の悪化を受けて、米金利は10年債利回りが前日終値比0.15%もの大幅な低下となり、またNYダウは700米ドルの大幅高となりました。米景気後退への懸念から、FRB利上げ姿勢が緩むことを期待した動きと考えられます。
ただ4日に公表された2022年12月FOMC議事録では、「2023年中の利下げを予想する参加者はいなかった」、「経験的には、金融政策を時期尚早に緩めるのは慎重になるべき」とした上で、「市場が誤った判断により株高、金利低下となることは、FOMCによるインフレ是正への努力を阻害する」とまで述べていました。
以上のように見ると、6日のISM非製造業景気指数を受けた株高、米金利低下といった動きも、この間続いてきたFOMCとの「大いなる認識ギャップ」による可能性が高いのではないでしょうか。
今週は、注目のインフレ指標、米12月CPI発表が予定されており、前年比上昇率は前回の7.1%から6.6%へ一段と低下すると予想されていますが、FOMCとの認識ギャップのなかで予想通りインフレ是正が進んでも、米金利の低下、それに伴う米ドル下落には自ずと限度があるのではないでしょうか。
それでも、過去2ヵ月、米ドル/円は米ドル反発の限度が確認されると、一段安に向かうパターンが繰り返されてきました(図表1参照)。その意味では、年末年始から続いている130~135円のレンジを抜けた方向に当面のトレンドが出る可能性は高いでしょう。
以上を踏まえた上で、今週の米ドル/円については、まさに130~135円中心での展開を予想したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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