(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢になったら、足りない栄養を足す、不足しがちな運動を足す、枯渇している性ホルモンを足す、娯楽や楽しみを足すなど、体と心が元気になることを足していくことが若さと活力の維持につながります。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『シャキッと75歳 ヨボヨボ75歳 80歳の壁を超える「足し算」健康術』(マキノ出版)で解説します。

80代は身体機能や認知機能の衰えが目立つ

■70代は老いを受け入れつつ老いと闘える最後の世代

 

人生100年時代。高齢期に入り長い老後をできるだけ若々しく元気に暮らしたいと、誰しも願うのではないでしょうか。

 

老化により体や頭の働きが衰えてくるのは避けられません。転倒による骨折や脳梗塞などに見舞われれば老化が加速することもあります。

 

しかし、一般的には老いは一気に進まず、ゆるやかにやってくるものです。

 

適切に対処すればシャキッと若々しくいられる時間をより先へと引き延ばすことができます。老いと闘える間は闘ってみる。それでも足腰や目、耳、記憶力などで衰えのほうが目立ってきたら老いを受け入れるというのが現実的といえます。

 

私は三十数年にわたり精神科医として高齢者を専門に診てきました。この経験から、70代は老いと闘える最後の世代ととらえています。

 

80代になると、どうしても身体機能や認知機能などの衰えが目立ってきます。

 

たとえば要介護認定率は、65~69歳で3%弱ですが、80~84歳では28.1%と10倍近く増加します。また、認知症の有病率は65~69歳で3%弱程度であるのにたいし、80~84歳になると21.8%にはね上がります。80代は老いが本格化する世代ということです。

 

では、60代と80代の狭間にいる70代はどうでしょうか。


 
70代の要介護認定率は、70代前半で6%、後半で12.8%。認知症の有病率は、70代前半で4.1%、後半で13.6%です。

 

つまり、後期高齢者と呼ばれる75歳を境に、認知機能や運動機能の衰えが顕著になるということです。脳血管疾患(脳卒中や脳梗塞)や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、がんなどさまざまな病気にかかるリスクが大きくなるのも75歳以降です。

 

75歳の節目をシャキッと通過して70代後半も笑顔で快適に過ごしたいのか、ヨボヨボした70代後半になるのか、75歳はいわば分岐点ともいえます。

 

老いと闘ううえで、現在70代の人は大きな強みがあります。というのも、戦前の食糧難の時期に子ども時代を過ごした親世代とは違い、現在70代の人は子どもの頃から肉や乳製品などをとっています。したがって、栄養状態は親世代が70代だったときよりもはるかによく、体力があり体格もしっかりしています。

 

日常生活を自立して送ることができる人がほとんどで、健康レベルは中高年の延長といえる状態です。現役で仕事を続けている人も少なくありません。

 

まだ余力がある70歳から、意識して体を動かしたり栄養をとったりして老いと闘えば、75歳の節目もシャキッと通過し、80歳の壁を軽やかに越えて充実した老後を迎えることができます。

 

反対に老いと闘わなければ、ヨボヨボとした75歳になって80歳へ突入する可能性が高くなります。「年だから、もういいや」とあきらめるのはもったいない。長くなった老後を楽しく送るために、今日からアクションを起こしてみませんか。

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    ※本連載は和田秀樹氏の著書『シャキッと75歳 ヨボヨボ75歳 80歳の壁を超える「足し算」健康術』(マキノ出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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