結果がでるまでがんばり続ける
このようにイーロン・マスクがやることは、いつも壮大で超スピーディだ。
しかも、歯に衣着せぬ発言を繰り返しては炎上騒ぎを起こすマスクは、それを一向に気にしないメンタルをも持ち合わせている。
だからといって、彼が天才的な思いつきで、周りをいつも一方的に振り回しているのかというとそうではない。
マスクの特徴は、「壮大過ぎるほどのビジョンを掲げる一方で、緻密なマスタープランに沿ってものごとに取り組み、結果が出るまで何度失敗しようとも決して諦めることなくがんばり続ける」ところにある。
マスクのような「ビジョナリー」の中には、素晴らしいビジョンをつくることは得意でも、ビジョンを達成するための「計画を立て、お金を集め、人を動かし、ものをつくる」ことは苦手とする人が少なくない。
しかし、マスクは「アイデアがあれば、まずものをつくる」タイプの人間であり、「ものづくりは多くのイノベーションが注ぎ込める分野だ」と言っているように、ビジョンを形にして、すぐれたものをつくる力も備えている。
本連載では、1990年に南アフリカ共和国から何も持たずにカナダに移住してきた若者が、わずか30年でどうやって世界を動かす存在となったのか――「神がかり的な決断の速さ」と「神をも恐れない鋼のメンタル」を持つマスクの生涯を軸に、彼の知られざる仕事術を紹介していく。
世界初のネットバンキングの設立、誰もが不可能と思った電気自動車・大衆化への取り組み、ロケット打ち上げを軸とした宇宙開発事業への挑戦、「火星移住」という壮大なビジョンと実現へのチャレンジ……。
稀代の天才にして、不世出の実業家といわれるマスクだが、彼も最初からそれができたわけではない。
生まれが南アフリカで、大学からアメリカに渡ったため、まず「人脈がなかった」。親の援助が得られず、奨学金で大学へ行ったため「お金なし」どころか「借金あり」の状態だった。
さらに、設備もなかった。だから、プログラムとサーバーをパソコン1台で兼ねてしのぐなど、まさに「ないないづくし」のスタートだった。
しかし、自分の得意なIT関連からスタートして徐々に力をつけ、才能を磨き、資金を蓄える中で「世界を救う」ためのビジネスに関わるようになっていったのだ。
その意味ではマスクの仕事術を知ることは、自分のビジョンや夢を実現したい、いつかは大きなことをしたいと考えている人にとって、とても参考になるはずだ。
夢を持ちにくい時代ではあるが、マスクを知れば、今よりもきっと大きな夢を見ることができる。また、夢に近づく方法も学ぶことができる。
本連載を読み、「なるほど」「これはいい」と思ったら、マスクばりにすぐに実行してほしい。少しでも皆様のお役に立てば、これに勝る幸せはない。
桑原 晃弥
経済・経営ジャーナリスト