料理は究極の認知症予防になる
■食習慣を見直す――献立を考えることは認知症予防になる
この連載では、自分の老いを「あきらめて、受け入れて」、ラクに生きようよと伝えたいのですが、老いたことを認めてすべてをあきらめることではありません。
さんざん言っていますが、放っておけば人間の機能は落ちていきます。これだけは、自分でなんとかするしかありません。子どもがいても配偶者いても、役に立ちません。自分の体調や状態、身体の痛みがわかるのは自分だけです。
70代からは、より敏感に自分の身体の声を聞いていく必要があります。
そして、身体の調子を整えるのは、やはり食べることでしょう。自分なりの健康法を持つのはいいことですが、基本は食事であると私は思っています。
世間にはたくさんの食に関する健康法があります。毎年、新しい健康法が出てきて、「納豆がいい」となれば、スーパーの棚から納豆が消えたりします。高齢者は紅茶キノコを覚えていますね。酢玉葱、朝バナナ、少し前まではスムージー、野菜スープも流行っています。
どれも、ある一定程度は効果があるのでしょう。でも、人間は飽きっぽい動物でもあります。毎日同じものを食べると飽きます。
また、世の中には「朝ご飯は食べたほうがいい」「朝ご飯抜きの2食がいい」等の情報があふれています。それを決めるのはテレビや本の情報ではなく、あなたの身体です。
夕食を食べ過ぎたら朝食を軽くする、三度三度腹八分目に食べることがいちばん調子がいい、朝はたくさん食べて夜は小食にしたほうが調子がいい等、人それぞれの食事の量やリズムがあります。
まずは、自分の身体に聞いてみましょう。どういうリズムがいいのか、どのくらいの量がいいのか、あるいは便秘にならないようにする食べ方などがあるはずです。
以前、一日に30品目とらないといけないと推奨されたことがありました。そんなことを考えていたら料理するのが面倒になりますね。
足りない成分があったら、サプリメントで補うのもいいと思います。
まず何より、日本の高齢者に不足しているのはたんぱく質です。このことはあとで解説しますが、たんぱく質がしっかりとれる食事を考えていきたいです。
老後こそ、自分の好きなものが食べられるのです。自分で献立を考え、そろえていくことはおおいに認知症予防になると思います。
前に、若い男子学生に向けての「家事力、炊事力をつけろ」という新聞記事を読んだことがあります。詳細は忘れましたが、コンビニ弁当を買うより、ご飯を炊いて野菜炒めをつくったほうが、長期的には経済的で安心できるものです(ただし、材料の品目が少なくなりがちなので高齢者には要注意ですが)。
若い人はコンビニ弁当では足りなくて、カップ麺や菓子パン等を一緒に買い込んだりします。これではよけいな出費になります。自分で米を炊き、どんぶり飯を食べ、納豆と具沢山味噌汁があれば腹いっぱいになります。
これはやってみると面白いものです。料理は習慣なのかもしれません。
これからの時代を乗り切るには、家事力が大事だとその新聞に書いてありました。
これは若い人だけでなく、高齢者にも必要な要素です。
配偶者がいる男性も、いつまで妻が元気でいるかわかりません。
料理というのは、とても認知機能を使う仕事なのです。妻だけにその究極の認知症予防をさせていてはもったいない。あなたが男性なら、妻に邪魔にされるかもしれませんが、厨房に参戦して自分の食生活を見直してみましょう。
和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長
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