環境的要因と遺伝的要因から最適な治療を導き、医療の質を向上させる新たな概念である「ペイシェント・ベイスド・メディスン(PBM)」は、従来の標準化された治療方針では見落とされてしまう、遺伝情報や患者個々の出身地や生活歴などの背景を考慮した治療を行うものです。東大病院に勤務後、現在は年間10万人を超す外来患者が殺到する眼科病院の理事を務める眼科医・宮田和典氏が、次世代医療の要と成り得る「ペイシェント・ベイスド・メディスン(PBM)」について詳しく解説します。
PBMの考え方でいくつもの日本初の知見や治療法を確立
私自身はPBMの考え方をもつようになるまで、何十年も目の前の患者から得られたデータをもとに研究を進めてきました。
実際に患者を診察・治療しながらデータを集め、それを分析し、その結果をまた患者にフィードバックする――それを何年も繰り返せば、非常に精度の高い、まさに自分の患者のためのエビデンスができるのです。
それは病気本来の特性に上乗せして、地域特性や患者特性まで配慮した、まさに自分の患者のためのエビデンスです。
自分の患者からエビデンスを集め、それを治療に反映させていくサイクルの繰り返しによって、いくつもの日本初の知見や治療法を確立、患者に還元することができました。
なお、私たちが患者から導き出し、患者に応用するためのエビデンスは、必ずしも最も信頼性が高いレベルのエビデンスである必要はありません。
単なる意見や感想では意味がありませんが、その下のエビデンスレベルである非ランダム化比較試験やコホート研究、症例対照研究でも十分に役立つエビデンスとなるのです。
これらの研究は、ガイドラインを作る際のエビデンスとしては弱いものですが、実際に個々の患者に応用するには非常に有効なエビデンスとなるからです。
宮田 和典
宮田眼科病院 理事長
医療法人明和会 理事長
宮田眼科病院・医療法人明和会理事長
日本眼科学会監事・日本眼科学会評議員・日本眼科手術学会監事・日本角膜移植学会理事・日本角膜学会評議員・日本白内障屈折矯正手術学会理事・日本白内障学会評議員・日本眼感染症学会評議員・日本アイバンク協会評議員・宮崎県眼科医会理事・宮崎県アイバンク協会理事
ラ・サール高等学校、そして久留米大学医学部を卒業した後、1984年東京大学医学部眼科に入局。助手を経て、1991年、博士号を取得後、講師になる。在職中は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校に留学した。
帰国後、医療法人明和会宮田眼科病院の副院長に。
1999年に院長、2008年に理事長に就任。
1990年代前半からエキシマレーザーの基礎研究に携わり、
白内障手術・眼内レンズ・人工角膜ではエキスパートとして知られている。
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