精度の高いペイシェント・ベイスド・メディスンを叶える、著者流PDCA
多くのスタッフを揃え、大学病院を始めとするトップレベルの研究者との共同研究を数多く手掛けるほかに、私の病院の研究を大きく特色づける強みがあります。
それは、臨床研究にあたって行われている独自のPDCAサイクルです。
PDCAサイクルについては知っている人も多いと思いますが、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のプロセスを循環させて、マネジメントなどの質を向上させていく概念です。
私たちはこれに掛けて、私の病院の研究体制を独自のPDCAで表現しています。
それは、Patient(患者)、Data(データ)、Consequence(結果)、Adaptation(適応)──です。
Patient=患者を中心にしてデータを収集し、そのデータを基に研究して、研究結果を再度患者に適応させていく一連の流れが私の病院流のPDCAです。
まず、日々の診察において、医師が診察・治療等を行い、その結果をプロの検査員が患者から膨大なデータとして収集します。集まったデータは、統計解析などの専門家によって分析されます。そこで、実際の治療に役立ちそうな何らかの知見が得られた場合は、診療の場で実際に患者に応用します[図表1]。
例えば、100例分のデータを集めてみて、良い結果が得られたならば、さらに次の100例、200例にその結果を適応させていきます。
一方で、データを分析する過程で疑問点が出てきた場合は、専門家による解析を行って、疑問点を検証していきます。疑問点に答えが見つかったら、それを再度、治療の場に活かしていきます。すると、また新たな疑問が出てくるのです。その場合はさらに、疑問を解消するための研究を行い、その結果を診療に活かします。
こうした一連の流れを私たちは何度も何度も繰り返していきます。
それによって、データが蓄積されて、そしてエビデンスのレベルが上がっていく、そして患者に対する治療のレベルが上がっていく──これが我々が実践している研究システムなのです。
自分たちの患者の分析データが蓄積されるほど、全患者に役立つエビデンスとしての有用性も高まる
実際の診療の場とレベルの高い研究の場が切れ目なくつながっている環境があるからこそ、ハイレベルなPatient-based Medicine(以下、PBM)に使えるエビデンスが構築されます。
実はこの研究体制こそが、私たちが提唱するPBMの肝になっているのです。
私たちはこうした自分たちの患者データを使用した研究を10年、20年と継続して行っています。
10年、20年とデータの蓄積とフィードバックを繰り返すうちに、私たちのもとには世界中どこにもない、私たちの患者から得られた、私たちの患者のエビデンスが蓄積されていきます。
そしてそのデータの数が大きくなればなるほど、私たちの患者以外の多くの人たちにとっても役立つエビデンスとなっていくのです。