(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、20年以上の婚姻期間の末に離婚を決断する「熟年離婚」の割合が増加しています。とくに熟年離婚においては、老後の生活が差し迫っているため、婚姻費用・財産分与・慰謝料などお金に関する問題はよりシビアに考えておく必要があります。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、熟年離婚に伴う婚姻費用・財産分与について加藤勇弁護士に解説していただきました。

別居の際に妻から「通帳を持ち出したい」と言われ…

相談者のNPさん(50代男性・仮名)は、妻が長年の不満を募らせていたことが原因で、別居をする予定になっています。

 

別居にあたって、NPさんが婚姻費用を渡すつもりでいましたが、妻は「隠し財産をつくるかもしれない」「婚姻費用を渡さないのではないか」と疑っているため、NPさんの給与振込口座の通帳を持ち出し、管理して必要な生活費を渡すと言っています。

 

給与振込口座は結婚当初から変わらず、家族の生活費を賄っていました。

 

現在は持ち家に暮らしており、ローンなどはありません。子どもはもう社会人なので、夫婦間の問題になります。

 

NPさんは給与振込口座が同じである場合、これまでの預金と混ざってしまって、離婚時の財産分与でわかりにくくなってしまわないかと懸念を抱いています。

 

別居時にきちんと決めておかなければ、離婚時にもめる原因になりかねないため、NPさんはココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

 

1.財産分与の際、給与振込口座をNPさんが管理し、婚姻費用を渡す形にしなければ、別居中に増えた財産も共有財産になってしまうのか。

 

2.別居時点で給与振込先を別口座にし、そこから婚姻費用を渡すべきなのか。

 

3.婚姻費用には、妻の医療保険代、携帯代、光熱費、家賃など、全ての生活費が含まれるのか。

別居の際、何を注意すればいいのか

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際又は離婚後に分けることをいいます。

 

具体的には、原則として別居時の財産を分けることになりますが、単なる単身赴任の場合など協力関係の実体が存続している場合には、別居とは認められない可能性があり、いつの時点の財産を分けるのか争いになるケースもあります。

 

そのため、NPさんのケースにおいても、原則として別居時の財産が財産分与の対象となりますので、仮に別居中に財産が増えたとしても、別居中に増えた財産は財産分与の対象とはなりません。

 

別居の際に、給与振込口座をNPさんが管理されても、奥様が管理されても、別居日時点の預金残高は変わりませんので、ご心配は不要です。

 

一方で、NPさんの別居が、単なる単身赴任の場合や、家庭内別居にとどまり経済的協力関係の解消に至っていない場合には、いつの時点の財産を分けるかが争いになるケースもあります。

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