「人件費を下げる」…間違った方向でのコスト削減
日本人の特長として、目指すべき目標を提示すると、それに愚直に取り組む事ができる。
その一つに“コストの削減”があるが、経済活動において、他社との競争のためにコスト削減は絶対的に必要な事である。
幸い日本人はこのコスト削減に長けていて、品質の良さも相まって、世界に日本の製品が出回った。最近は中国などの低価格品に押され気味ではあるが、まだまだ日本の製造業は頑張っている。
コストの削減を徹底的に行える事は、一見素晴らしい事で、何処の国民よりもコストを削減でき、品質を落とさずにモノを作れる事は世界に誇れる事である。
しかし中国等の後進国の経済力が上がってきて中国製品との競争が激化してくると、コスト削減のために人件費に手を付け、そして仕入先を買い叩き、低賃金の労働者を増やすと云った愚業を行ってしまった。企業の要望もあり、2001年からの小泉政権下で非正規雇用の対象業務を増やし、低賃金の労働者を一気に増やしてしまった。
ほんの30年程前までは、一億総中流と云っていたのだが……。その結果、社会に大きな歪みを生んでしまった。製造コストの要素は単純に云うと、材料費と加工費の二つである。その加工費の中に、人の作業によるコストと機械での作業によるコストがある。
80年代までは、人で行ってきた作業を機械化する事でコストを削減したり、作業を効率化する事でコストを下げてきた。しかし中国をはじめとした東南アジア諸国との競争が激化してきてからは、人件費の時間単価を下げる事でコスト削減をし始めた。
時間単価を下げるために、先ずは正社員の給料を下げ、次に正社員をクビにしてパートタイム等の非正規労働者を増やす事で人件費を抑え、コストの削減を実現する様になっていった。これは企業が絶対にやってはいけない事で、コスト削減を実現するためには人件費の時間単価を下げる事をせずに実現すべきである。