(※画像はイメージです/PIXTA)

消費税の「インボイス制度」の登録期限が2023年3月末日に迫っています。しかし、東京商工リサーチの調査によると、個人事業主の登録率は2022年11月末時点で20%未満でした。その背景には、インボイス制度に対応するためのコストがかかることに加え、制度自体への反対や疑問が根強いことも挙げられます。本記事では、インボイス制度の概要と問題点についておさらいします。

◆消費税の制度内部の矛盾

さらに、消費税の制度内部において矛盾が発生し、法秩序の統一性に反するという問題があります。

 

そもそも、免税事業者の制度趣旨は、年間売上高1,000万円以下の事業主について、消費税の納税の手間・コストをかけさせるのが酷だからというものでした。

 

しかし、インボイス制度によって少なからぬ免税事業者が事実上、課税事業者になることが強制されることになれば、免税事業者の制度趣旨が没却されることになります。

 

これは、法秩序内部の矛盾といわざるをえない事態です。

「救済措置」は決まったが…

◆「救済措置」の内容

これに対し、2022年12月23日に発表された「2023年度税制改正大綱」において、従来の免税事業者が課税事業者に転換した場合の「負担軽減策」が明らかにされました。その内容は以下の通りです。

 

・免税事業者が課税事業者に転換した場合の納税額を売上税額の20%とする(転換から3年間)

・年間売上高1億円以下の事業者は、1万円以下の取引についてインボイスなしで仕入税額控除できるようにする(制度導入から6年間)

 

しかし、これには以下の問題点があります。

 

◆納税額を売上税額の20%とする措置の問題点

第一に、納税額を売上税額の20%とする措置は、簡易課税制度との区別が不明であり、納税の計算をいたずらにややこしくするだけです。

 

しかも、簡易課税制度においてそもそも納税額が売上税額の20%以下の業種(「卸売業」(10%)と「小売業、農業・林業、漁業」(20%))についてはなんの救済策にもなっていません。

 

◆1万円以下の取引についてインボイス不要とする措置の問題点

第二に、1万円以下の取引について仕入税額控除の計算にインボイスを不要とする措置には、以下の問題点があります。

 

・対象となる取引の範囲が限られる

・1万円以下の取引とそれ以外の取引を区別して扱うことで事務が煩雑になる

 

これらのことを考慮すると、「救済措置」としては名ばかりであるといえます。

 

インボイス登録が遅れていること、システム導入等の整備に時間と費用がかかること、制度自体に欠陥があること、根強い批判があることを考慮すれば、現状のまま実施を強行すれば混乱を招き、取り返しのつかない禍根を残す可能性があります。政府・国会は、いったん施行を延期し、そのうえで、制度設計自体を見直すことが求められているといえます。

 

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