(※画像はイメージです/PIXTA)

消費税の「インボイス制度」の登録期限が2023年3月末日に迫っています。しかし、東京商工リサーチの調査によると、個人事業主の登録率は2022年11月末時点で20%未満でした。その背景には、インボイス制度に対応するためのコストがかかることに加え、制度自体への反対や疑問が根強いことも挙げられます。本記事では、インボイス制度の概要と問題点についておさらいします。

インボイス制度の問題点

裏返していうと、売上高1,000万円以下の免税事業者はインボイスを発行することができません。したがって、免税事業者と取引をする事業者は、インボイスを受け取ることができず、「仕入税額控除」ができなくなってしまうのです。

 

そうなれば、免税事業者と取引をしている事業者は、以下のいずれかを選択する可能性が高くなります。

 

・免税事業者との取引をやめる(他の課税事業者との取引へと切り替える)

・免税事業者との取引は継続するが消費税相当額の値引きを要求する

 

東京商工リサーチが12月上旬に実施したアンケート調査の結果によれば、「免税事業者とは取引しない」と回答した企業が10.2%であり、「取引価格を引き下げる」は2.7%、「検討中」は46.7%だったとのことです。

 

この結果からすれば、従来の免税事業者は、大きな不利益を被る可能性が高いといえます。

 

それを避けるには、「課税事業者」に転換してインボイスを発行できるようになるか、あるいは、値引きを受け入れるかしかありません。

 

そうなれば、従来の免税事業者は、以下の通り、二重の不利益を被ることになります。

 

・実質的な手取りが減る

・インボイスを発行するためのコスト・手間がかかる

 

◆「益税」叩きの不公正さ

ここで、よくある指摘が、免税事業者の「益税」ということです。

 

「これまで、免税事業者は本来国に納めるべき消費税相当額を懐に入れていた。これは『益税』であり。解消されて当然だ」

 

 

「ホリエモン」「ひろゆき」等のインフルエンサーまでもが「益税」の主張に加担しています。

 

しかし、この「益税」叩きは誤解・浅薄な理解に基づいており、しかも、不公正・不公平です。

 

理由は二点あります。

 

第一に、免税事業者のなかでも、顧客がもっぱら一般消費者である場合、消費税の納税義務を負わない代わりに、商品・サービスの価格に消費税相当額を転嫁していない例が多くみられます。

 

現に、2004年に消費税の免税事業者の基準が「年間売上3,000万円以下」から「年間売上1,000万円以下」へと引き下げられた際に、飲食店等で「消費税が課税されることになったので値上げをします」という申し訳なさそうな貼り紙等を見かけたことがあるはずです。そのときでさえ、長らく値上げに踏み切れなかった事業者がいました。

 

しかも、このような事業者も仕入れを行う際には消費税相当額を支払っているため、その分だけ損をしているとみることもできます。これは到底「益税」とはいえません。

 

第二に、業務委託等で働いている個人事業主・フリーランスの免税事業者は、委託する側の業者との力関係の差を考えると、これまで、商品・サービスに消費税分を実質的に価格に転嫁できる余地がどの程度あったか、疑わしいといわざるをえません。

 

また、そもそも、免税事業者である立場を利用して、消費税相当額を価格に転嫁せずに価格を抑えることは、正当かつ合理的な戦略といえます。

 

むしろ、免税事業者の相手方のほうが、本来、免税事業者に支払ってこなかった消費税相当額について「仕入税額控除」をしてきた可能性すらあります。これも実質的には「益税」と表現できます。

 

また、相手方が「簡易課税制度」を採用している場合はなおさら「益税」と表現すべきです。

 

そのような実態があるにもかかわらず、免税事業者のみ、しかも、実質すら怪しい「益税」をあげつらって叩くのは、明らかに不公平・不公正な弱いものいじめです。

 

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