(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

 

大企業・製造業・業況判断DI+7と1ポイント悪化、非製造業は+19で5ポイント改善

 

中小企業・非製造業の業況判断DI+6。2ヵ月連続でコロナ禍前以来のプラス

 

全規模・全産業設備投資計画、22年度+15.1%。ソフトウェア投資+14.3%

 

 

●12月調査日銀短観では、大企業・製造業・業況判断DIが+7と9月調査の+8から1ポイント悪化した。原材料高・円安によるコスト高などから4期連続の悪化となった。12月調査の調査期間は11月10日から12月13日である。

 

●大企業・製造業で「悪い」と答えた割合は19年12月調査では12%だったが、新型コロナウイルス感染拡大のため、20年6月調査で41%まで大きく増加した。しかしその後改善に転じ、21年6月調査で9%まで低下し9月調査・12月調査でも9%と横這いだった。しかし、22年3月調査で10%と7期ぶりに悪化し、6月調査で12%に、前回9月調査で13%と3期連続で悪化した。今回12月調査では13%と前回9月調査と同じで、悪化は止まったかたちだ。

 

●12月調査の大企業・製造業の業況判断DI+7は9月調査の「先行き」見通し+9より2ポイント悪く、景況感は思っていたよりも悪かったことになった。

 

 

●大企業の「先行き」業況判断DIは+6と「最近」の+7から1ポイントの悪化が見込まれている。「良い」と「悪い」の割合が減り「さほど良くない」が増えている。様々な不透明さが影響していると思われる。

 

●全規模・全産業の22年度下期の想定為替レートは12月調査132円31銭で、6月調査の126円43銭から円安方向になった。

 

●一方、大企業・非製造業・業況判断DIでは、前回9月調査で+14のプラスだったが、今回12月調査では5ポイント改善し+19になった。旅行支援策などの後押しで宿泊・飲食サービスなどが改善した。9月調査に続いて、製造業が悪化、非製造業が改善と対照的な動きになった。非製造業は前回9月調査の「先行き」見通し+11を8ポイント上回り、事前の予想を大きく上回って、足元の景況感の改善を感じられる数字となった。新型コロナウイルス感染第8波があっても、経済活動自粛要請がなかったことなどがプラスに働いているとみられる。

 

●大企業・非製造業で「悪い」と答えた割合は17年9月調査から19年12月調査まで4%または5%で安定的に推移していたが、新型コロナウイルスの影響で20年に入り悪化、20年6月調査で32%に増加した。しかし、その後改善し、22年9月調査では10%まで低下した。今回12月調査では8%と1ケタに低下した。

 

●大企業・非製造業・業況判断DIの「先行き」は+11と「最近」の+19からと8ポイントの悪化が見込まれている。但し「悪い」と答えた割合は「先行き」は8%で「最近」の8%と同じで悪化していない。その中で業況判断DIが悪化しているのは、先行きが不透明で「良い」の割合が8ポイント減り「さほど良くない」の割合が8ポイント増えているからだ。

 

●中小企業・製造業の業況判断DIは今回12月調査では▲2とマイナスながら、9月調査の▲4から2ポイント改善した。9月調査の「先行き」見通しでは▲5とみていたので、足元の景況感は3ポイント予測よりも良かったという結果になった。

 

 

●一方、中小企業・非製造業の業況判断DIは、前回9月調査で+2だったが、今回12月調査では+6まで改善した。コロナ禍前の19年12月調査の+7以来の水準である。9月調査時点の「先行き」▲3からは9ポイントの改善で、予測より大幅に改善したことになった。

 

●中小企業・製造業の「先行き」の業況判断は▲5と「最近」▲2から3ポイント悪化する見通しである。また、中小企業・非製造業は「先行き」を慎重にみる傾向があり、▲1と「最近」+6から7ポイント悪化する見通しである。

 

●全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9月調査の▲48に近かった09年3月調査の▲46を底に上昇し、東日本大震災による一時的落ち込みなどを挟んで13年9月調査で+2と07年12月以来のプラスになり、以降プラスが続いていたが、20年3月調査で▲4と19年12月調査の+4からマイナスに転じ、6月調査では▲31と2ケタのマイナスになった。しかし、その後21年12月調査で+2のプラスに転じるまで6期連続で改善した。22年3月調査では0と7期ぶりに悪化したが、6月調査では+2、9月調査では+3のプラスとなった。今回12月調査で+6と3期連続で改善した。9月調査の「先行き」+1の見通しに比較すると5ポイント改善した。今回の12月短観は全体としてみると、景況感は大企業・製造業は4期連続で悪化したものの、その他のカテゴリーは改善傾向で、全体として緩やかに改善したと言えよう。先行きは+1の見通しだ。足元の景気に底堅さはあるが、先行きの不透明さが景況感に影を落としていよう。

 

●今回12月調査の雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)では製造業・非製造業とも大企業・中堅企業・中小企業の3カテゴリーで変化幅が全てマイナスになり、9月調査からの限界的な変化として不足感が増した。12月調査の先行き見通しでも、「最近」からの変化幅がすべての組み合わせがマイナスで、不足感が拡大している。企業の判断では、先行きの雇用に関しては雇用の過剰感が増しているというような状況ではないことがわかる数字になった。企業の雇用人員判断が、賃金の上昇に繋がっていくか注目される。

 

●12月調査の22年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は9月調査の+21.5%から僅かに鈍化したが+21.1%となった。中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は9月調査の+1.3%から12月調査で+3.8%に上方修正された。全規模合計・全産業の設備投資計画・前年度比は9月調査の+16.4%から12月調査で+15.1%に下方修正された。

 

●また、GDPの設備投資の概念に近い、ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全規模合計・全産業の設備投資の22年度の前年度比は+14.3%で、2ケタ増加の計画になっている。また、ソフトウェアの全規模合計・全産業の設備投資の22年度の前年度比は+17.8%である。

 

●9月調査の販売価格判断DI(「上昇」-「下落」)は大企業・中小企業と製造業・うち素材業種・うち加工業種・非製造業のすべての組み合わせのうち、中小企業・素材業種を除き、「最近」の変化幅はプラスとなっている。

 

●「企業の物価見通し」では、全規模合計・全産業でみて、販売価格の見通しでは、1年後が+3.2%と前回9月調査の+3.1%から0.1ポイント上昇した。3年後が+3.8%で前回と変わらなかった。5年後が+4.3%と前回より0.1ポイント上昇した。また、物価全般の見通しでは、1年後が+2.7%と前回より0.1ポイント上昇、3年後が+2.2%と前回より0.1ポイント上昇したが、5年後が+2.0%と前回と同じになった。前回で、短観の企業の物価見通しは、全規模・全産業の上昇率見通しが6つの項目全てで、4回連続高まるというこの調査開始以来の連続記録更新したが、5期連続とはならなかった。企業の物価の先行き見通しに若干変化が生じてきた可能性がある。

 

 

●今回12月調査の日銀短観は総じてみると、足元はコスト高の悪影響はあるが、全国旅行支援の下支え効果などで全体として底堅さが底堅さも感じられる内容だった。但し、世界景気の先行き、インフレの動向、欧米の中央銀行の金融政策、為替相場の行方、新型コロナウイルス感染状況など様々な懸念材料による、不透明さが大きく、企業は先行きを相当慎重に見ていることが感じられる内容だった。

 

 

(2022年12月14日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年12月調査 日銀短観』を参照)。

 

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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