筆者が考える「今年の漢字」…2022年の振り返り
2022年ももうすぐ終わりです。
12日に、京都の清水寺で発表された2022年の漢字1文字は「戦」でした。
筆者は、「別」を挙げます。われわれは2022年に、別次元や別世界に入り込んだように思えます。
2022年は、ロシアとウクライナのあいだで、約80年ぶりの戦争がありました。これにより、平和との離別が決定的となりました。
またそれは、経済制裁や、資源・農作物輸出の抑制などを引き起こし、(折からのブレグジットやトランプ現象、気候変動対策、パンデミックに加えて)グローバル化との離別を後押ししました。世界は今後、いくつかの「極」に分かれていくものとみられます。
TSMC(台湾積体電路製造)創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏が米アリゾナ州を訪れた際に、「地政学上の大きな状況変化が起きた。グローバリゼーションと自由貿易はほぼ死んだ」と発言しましたが、まさにそのように思えます。
TSMCは同日、米アリゾナ州への総投資額を従来計画比3倍強の400億ドルとすると発表しました。
2024年から4ナノメートルの半導体を製造するほか(→当初予定は5ナノ)、2026年には(現時点で)世界最先端の3ナノメートルの半導体も製造するそうです。
背景には、米政府による巨額の補助金支援があります。他方で、米国は、中国への先端半導体の輸出を規制するとともに、日本やオランダにも同様の規制を設けるよう、働きかけています。かつてのCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)を思い出させます。
グローバル化との離別は、生産の非効率化(サプライチェーンの見直し)と市場の分断(マーケティングの見直し)を指しますから、インフレが示唆されます。また、米中対立は軍拡を示唆しますから、総需要拡大の観点からやはりインフレが示唆されます。
安倍晋三元総理の「功績」
2022年も多くの別れがありました。なにより、ウクライナの人たちも、ロシアの人たちも愛する人たちと別れることになりました。
その心情は、青い空の下にいるわれわれには想像すらできませんが、同じ状況は、極東アジアに位置するわれわれにとって、近い将来の現実として捉える必要があるように思えます。
また、安倍晋三元総理との別れも大きいように思えます。評価は分かれると前置きしたうえで述べれば、
・国家安全保障戦略の策定や国家安全保障会議(NSC)の設置
・国家安全保障局(NSS)の編成
・特定秘密保護法の成立
・平和安全法制の成立
・米国との同盟関係の強化
・日米豪印の協力枠組み「Quad(クアッド)」を含むインド太平洋構想
など、彼の決断は、われわれの将来を救ってくれる可能性があるでしょう。
まさに別格の戦略家である彼の経験や洞察に頼れないことは大きな損失であるように感じます。
2023年は、ロシア・ウクライナ戦争の停戦や、中国の経済再開といった分別のある決断によって「和」の1文字となることを願います。