(写真はイメージです/PIXTA)

国土交通省の不動産価格指数によると、首都圏は、マンションが最高水準を継続し、戸建ても上昇しました。しかし、住宅市況については価格水準だけではなく、取引件数も加味して判断するのが適当だといえるでしょう。ニッセイ基礎研究所 渡邊 布味子氏の解説です。

在庫戸数も増加している

ただし、2022年10月の新築分譲戸建ての在庫戸数は13,056戸(前年同月比+54.7%)と、2022年2月以降、急速に増加しており、実需を超えた戸数が供給された可能性がある。

 

新築の定義は、「建物完成から1年かつ、今まで居住者がいないこと」である。建物完成から1年を超えれば新築ではなくなり、新築としての価格よりも価値が減少する。新築でも中古でもない*3ため、数値として把握するのは難しい。しかし、在庫戸数が急増した2022年2月から1年を経過する2023年2月ごろまで在庫の増加が続けば、建築後1年を経過した分譲戸建てが顕在化し始めると思われる。

 

供給者にとっては、新築住宅には1年という期限があるため中古住宅よりも「早く売却したい」という気持ちになりやすい。購入希望者にとっては交渉の余地が生じる。今後、新築分譲戸建ての価格の上昇には歯止めがかかる可能性があるのではないだろうか。

 

また、2022年10月の中古マンションの在庫戸数は40,300戸(前年同月比+14.4%)と9カ月連続で増加した。在庫戸数は、年単位で増加が続くことが多く、現在の勢いも強い(図表7)

 

【図表7】
【図表7】

 

中古マンションの場合、近年では元の所有者から不動産業者がマンションを買い取り、内装や水回りなどの設備を新築同様に更新してから、設備相応の値段で購入希望者に販売するのが通常である。販売価格が購入希望者の予算以内であればよいが、過剰な設備投資などにより販売価格が購入希望者の予算を上回ってしまうこともある。上昇し続けてきた中古マンション価格であるが、購入希望者が「適当と考える水準より価格が高い」と考え、成約に至らなかった物件が市場に積みあがってきているのだろう。

 

なお、新築マンションについては、2022年10月の販売在庫*4は4,945戸(前月から+148戸、前年同月から▲431戸)で、前年を下回る月が25カ月連続し、完成在庫*5も2,343戸と前年同月から▲405戸減少している。開発用地価格の高騰などから新築マンションの供給量自体が減ったために在庫戸数も減っており、図表3の初月契約率が70%以上を回復したことも併せると、新築マンション市場では価格は高水準で安定しているとみる。

 

*3:「新古住宅」等の通称で呼ばれ、人が住んだことはないが、新築にはあたらない。

*4:建物が完成する前に売り出されたマンションのうち、未だ成約せず在庫となっている戸

*5:建物が完成したマンションのうち、未だ成約せず在庫となっている戸

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年12月9日に公開したレポートを転載したものです。

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