(写真はイメージです/PIXTA)

2022年の市場を振り返ると、日本株は一進一退が続き、総じて上値の重い展開となり、やや下落。ドル円は大幅な円安ドル高となりました。2023年はどうなるのでしょうか。株式ストラテジストのニッセイ基礎研究所、上野剛志氏の分析です。

日銀金融政策(11月)

日銀…維持(開催なし)

11月はもともと金融政策決定会合が予定されていない月であったため会合は開催されず、必然的に金融政策は現状維持となった。次回会合は利上げ幅(0.50% or 0.75%)やドットチャート、先行きの利上げ方針などを巡り市場の注目度の高い米12月FOMC(今月12~13日)の数日後にあたる今月18~19日に開催される予定。

 

【図表19】日銀の長期国債・ETF買入れ額
【図表19】日銀の長期国債・ETF買入れ額

 

黒田総裁は11月14日の金融経済懇談会後の記者会見において、円安の進行が止まっていることについて、「大変結構なことである」と前向きに評価した。2013年に結ばれた政府・日銀の共同声明については「現在でも有効」としたうえで、声明に沿って「2%の物価安定目標を安定的・持続的に達成するために金融緩和を続ける」と表明した。

 

日銀が賃金上昇の重要性を説く場面が目立つなか、金融政策運営の声明にも「賃上げを伴うかたちでの物価上昇を実現するまで(金融緩和を)続ける」と書いた方がよいのではないかとの質問に対しては、「賃金の動向は様々なファクターによって影響される。(中略)金融政策によって左右しがたい色々な要件によって変わってくる労働生産性の上昇率ということも賃金上昇率に影響するので、(中略)具体的に賃金の上昇率とか、そういうことを何か金融政策の一環としてというか、目標として掲げるというのは、あまり適切なものではない」と否定的な見解を示した。

 

また、11月10日に行われた参院財政金融委員会の半期報告において、黒田総裁は、「来年度以降の賃上げ動向次第では物価目標達成時期が早まる可能性がある」との見方を示すとともに、「出口戦略は政策金利の引き上げペースと拡大したバランスシートの修正になる」との見解を示した(同日のロイター報道より)。

 

また、これに先立つ2日の衆院財務金融委員会では、「物価目標の安定的達成が展望できる場合は、イールドカーブ・コントロールの柔軟化も選択肢の1つ」(同日のロイター報道より)と発言している。「物価上昇は一時的であり、緩和を継続する」との基本スタンスは不変ながら、最近になって、物価目標の安定的な達成に対してやや前向きな見解を示したり、出口戦略の内容について具体的に言及する場面が目立っている。

 

なお、自身の去就については、2日の衆院財務金融委員会において「辞任しない気持ちに変わりはない」と述べ、任期途中での辞任意向を否定する一方で、10日参院財政金融委員会では、「再任されたいとか希望するとか、そういう個人的な希望は全くない」と続投の意思がない旨を明言している(それぞれ同日のロイター報道より)。

 

今後の予想

日銀は現在の物価上昇を一時的と見ており、金融緩和を粘り強く継続していく姿勢を基本的に維持している。黒田総裁から物価目標達成に対するやや前向きな見解の表明や出口戦略関する言及が増えている件については、特別な意図があるのかは不明だが、昨今の価格転嫁の進展によって、従来よりも持続的な物価上昇に自信をやや深めている可能性がある。

 

また、春闘を控えていることから、インフレ期待に働きかけることで「物価が上がらないとするノルム(社会的な規範)」を転換させ、企業や世の中における「賃上げへの機運」を醸成する効果を狙っているのかもしれない。

 

しかし、いずれにせよ、次期総裁が就任した後も安定的な2%の物価上昇の実現は難しいとみられることから、日銀は金融緩和を長期に続けざるを得ないと見込まれる。緩和継続のためには副作用への対応も適宜必要になるだろう。

 

従って、次期総裁就任後の来秋に、債券市場の機能度低下といった緩和の副作用軽減を名目として、枠組みの修正(誘導目標金利を10年債利回り→5年債利回りへ)を絡めて実質的に金利上昇許容幅を小幅に拡大しにいくと予想している。その際、日銀は金融緩和の縮小ではなく、あくまで副作用軽減を通じた緩和の持続性向上策であるとの位置付けを強調すると見込んでいる。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2022年12月2日に公開したレポートを転載したものです。

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