がむしゃらに頑張る「熱血社員」が会社を潰してしまう納得の理由とは

がむしゃらに頑張る「熱血社員」が会社を潰してしまう納得の理由とは
(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載では、人気YouTubeチャンネル「魚屋の森さん」の運営者で、IT企業から実家の魚屋の後継者へと転身し、新しい視点でSNSをビジネスに効果的に活用している森朝奈氏が、著書『共感ベース思考 IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得』から、経営における「共感ベース」の仕事術や発想法について解説します。

「結論」だけではなく「プロセス」も共有するメリット

プロセスを知ることで当事者意識がもてる

私が仕入れに同行するようになる前、父から入る魚の情報は「今日の金目鯛はいいよ」などという簡単なもの。私はいつも、「どこがいいの?」「なんでいいの?」と思っていました。同じ疑問を感じているスタッフは多いはずです。そこで、仕入れた魚の情報は私から発信することにしました。

 

市場では、仕入れをしながら父と仲買さんの会話を聞くことができます。よく聞いていると、なぜこの魚が「いい」のかがわかるし、もっと知りたければ仲買さんに教えてもらうこともできます。

 

知りたいことがわかったら、金目鯛の写真とともに「今日は地物(近くでとれたもの)で、一本釣りされた新鮮なものを仕入れました」というメッセージをシェア。

 

アルバイトやパートのスタッフにも、私から直接発信しています。

 

スタッフがこの情報を知っていれば、お客さまにすすめるときの説得力が増します。その結果オーダーしてもらえれば、本人の自信にもなるはずです。

 

新店舗を準備中のときは、日々の進行状況もシェア。「水槽の搬入予定が少し遅れることになりました」などと具体的に伝えます。

 

別店舗のスタッフにとっては、「知らなくてもいいこと」かもしれません。それでも知らせるのは、プロセスを共有することで当事者意識がもてるのではないかと思うから。何も情報がないまま、「新店舗が来週オープンします」と言われても、自分には関係ないことのように思えます。でもできていく過程を共有していれば、チームの一員として「一緒につくっている」と感じられるような気がするのです。

 

プロセスを共有するのは考える材料にするため

以前の職場で、上司から贈り物選びを任されたことがありました。何がよいのかわからず、情報集めからスタート。決めるまでに、とても苦労しました。でも後日、「とても喜ばれた」「よいものを選んでくれた」とうれしい言葉をかけてもらい、「やった!」。仕事への自信が深まったのを感じました。

 

喜びが大きかったのは、自分で考えて結果を出すことができたから。上司の指示が「〇〇を買っておいて」というものだったら簡単にこなせるけれど、達成感はなく、自信にもつながらなかったでしょう。

 

人を育てる立場になったとき、あのときの「やった!」をスタッフにも感じてもらいたいと思いました。自信につながるのは、自分で考えることです。考えるためには、材料が必要。その材料となるのが、ものごとのプロセスだと思うのです。

 

考える材料は多いほどいいので、自分がピンと来たものやだれかのヒントになりそうなものもどんどん共有しています。たとえば、プライベートで立ち寄ったお店のメニューが気になったときは、「〇〇のメニューがいい感じでした」などとひと言添えて写真をシェア。すると、「この部分のデザインはまねしてみたいです」「こういう料理もいいですね」などと反応してくれるスタッフが出てきます。

 

プロセスの共有を続けてきたことは正解だった、と感じられるのはこんなとき。

 

私が目指す「それぞれが自分で考えるチーム」ができてきた手ごたえを感じます。

 

 

森 朝奈

株式会社寿商店

常務取締役

 

共感ベース思考 IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得

共感ベース思考 IT企業をやめて魚屋さんになった私の商いの心得

森 朝奈

KADOKAWA

SNSでストーリーと信頼をシェア。「共感」からすべてが始まる! 代々鮮魚卸を営む一家に育った著者。女性が極端に少ない魚業界へ家業の2代目として飛び込み、YouTubeやSNSで「思い」をシェア。「魚好き」とつながりながら、…

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