事業を始めるときは自分の手を離れる前提で考える
このことに気づいてから、何かを始めるときは、いずれ自分の手を離れる前提でやり方を考えるようになりました。会社として仕事を動かしていくためには、「今」だけではなく「先」を見る視点も必要だということを学びました。
事業をつくることは、チーム全体で目標に向かうこと
仕事をするうえで本当に難しいのは、チームをつくることではなく、維持することです。たとえば「月給100万円!」といえば、メンバーはすぐに集まるでしょう。でもその約束を1カ月しか果たせなかったら、あっという間に解散です。
会社を存続させるために必要なのは、目先の100万円で盛り上げることではありません。継続できる範囲で支払える金額を提示し、それをチーム全体で増やしていく方法を考えていくことなのだと思います。
チームとして持続可能な形をつくっていくためには、自分のアツい部分は極力抑える必要があります。かといって、チームへの思いがなければ、スタッフの共感も得られないし、自分のモチベーションも保てないし……。
『冷静と情熱のあいだ』という小説がありますが、私の課題は、まさにこれ。自分の中の「青い炎」にジリジリあぶられながら、チームが求めるほどよい着地点はどのあたりなんだろう? といつも悩んでいます。
プロセスを共有することで考えるチームをつくりたい
仕事の上で父から学ぶことは山のようにありますが、ある部分では父を反面教師にしています。父は、社長である以前に職人です。会社が現在の規模まで成長しても、チームづくりの基本は「情」。スタッフは「ん?」と引っかかることがあったとしても、「社長がそう言うならしょうがないか」と協力してくれます。
でもそれは、創業者としてのカリスマ性もある父だからできることです。どう頑張っても私にはまねできないので、自分なりのチームづくりを目指すしかありません。その際、反面教師となるのが父なのです。
これまでは「トップダウン型」。社長である父が考えて判断し、決定事項を社内に伝えるスタイルでした。でも私は入社した頃から、決定するまでのプロセスも見せてくれればいいのに、と思っていました。
だから私は、自分が見たもの、聞いたもの、新しく得た知識は、できる限りスタッフにシェアするようにしています。「こうなりました」「こうしてください」と結論だけ伝えるのではなく、プロセスをチームで共有したいのです。