遅れが目立つ日本企業のダイバーシティ
多様な才能を持つ人材を豊富に抱えている企業は、競争上の優位性を獲得できるケースが多く、人的資本を重視するとコメントする経営者も目立つようなってきました。この人的資本を充実させるための切り口が「DEI」です。
ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)という言葉の頭文字を取った「DEI」。この3つを推進することは、生産的な労働力を生み出し、従業員、企業、投資家のそれぞれに多くの恩恵をもたらすことから、ビジネスの追い風になると考える企業が増えています。
「ダイバーシティ・リーダー企業」を目指して、グローバルな職場環境は着実に変化しつつあります。
たとえば米国では、2010年時点では労働年齢の成人の75%が白人でしたが、2020年にはその割合が64%に低下し、将来的には成人の割合は53%に低下すると予想されています[図表1]。
一方で日本は、まだまだ立ち遅れていると指摘される現状で、女性の役員登用に限っても12.6%に過ぎません[図表2]。しかも、東証プライム市場に上場する企業の2割が男性のみの役員で運営されており、業種によっては、女性役員がいない企業が半分以上もあります。
具体的な目標が不明確な企業がまだまだ多い
DEIが利益に直結することが証明されているにもかかわらず、多くの企業はその恩恵を受けられずにいます。なぜでしょう? その大きな要因は「説明責任の欠如」です。
DEIに取り組んでいる企業ですら、具体的な目標を課されている経営陣は26%にとどまっています。DEIの目標達成に注力している企業や、それを幹部や従業員のパフォーマンス評価に活用している企業は、さらに少ないのです[図表3]。
DEIを推進している企業は、同業他社よりも優れた業績を上げています。たとえば、マッキンゼーが15ヵ国の大企業1,000社を対象に、性別や人種のダイバーシティが業績に与える影響について最近実施した調査によると、幹部職の30%以上を女性が占めている企業は、女性幹部が少ない企業の業績を上回る確率が著しく高いことがわかっています。
ただ、株価での評価となると課題も残ります。ダイバーシティと収益性のあいだに関連性があることは明確であるものの、DEIと株価パフォーマンスに直接的な関連性があるかどうかは、まだはっきりしていません。