問題視される”現代奴隷”の存在
“奴隷”というとショッキングで時代錯誤な印象ですが、いまもまだ世界では、奴隷のように強制的な労働を強いられている人たちがたくさんいます。
たとえば、つい最近もアパレル業界では中国・新疆ウイグル自治区の強制労働が問題視されました。消費者の意識に敏感な業界では、“現代奴隷”への危機意識が急速に高まっています。ただ、一般の消費者から隔絶された業界では、まだまだ人権への配慮が不透明といえます。その典型が鉱山業界です。
鉱山での採掘で生計を立てる1億人の人々
ESG(環境・社会・ガバナンス)のなかでもとりわけS(社会)に関連して、企業の人権に対する取り組みに、投資家から高い関心が寄せられています。なかでも消費者から実態が見えない“奴隷”は深刻な問題です。
現代の奴隷労働は、企業の事業やサプライチェーン上において強制労働や他の人権侵害が行われていることを指し、公式には違法とされています。ただ、先進国を含む多くの国ではいまだにそれがまん延しています[図表1]。
アライアンス・バーンスタインでは、事業運営とサプライチェーン全体を軸に“現代奴隷”への関連度合いを業界横断で評価しました[図表2]。
黒色が特に懸念される業界ですが、なかでも鉱山会社はリスクが高まっていると位置付けています。 鉱山会社のリスクはなぜそれほど深刻なのか。いくつかの理由や背景があります。
1つは鉱業が経済に欠かせない産業で、新興国ではとりわけ重要性が高いこと。輸出の25%以上を燃料以外の鉱物が占めている40ヵ国のうち、75%は低・中所得国です。
安全対策が不十分で、危険性の高い小規模な採掘(ASM)は、こうした国々で行われています。国際労働機関によると、世界で約1,300万人がASMに従事していて、そこで生計を立てている人は1億人に上ると推定されています。
もう1つが、移民や少数民族など、特に立場の弱い人々を多く雇用していること。これは紛争が広がる地域や、汚職がまん延し、司法制度が十分には整っていない地域で事業を展開している企業が多いことに起因します。