衝撃…AIは平均的な家庭の「120年分以上」電力を消費する
AIが自ら思考し回答するように見えるのは、機械学習という独自の仕組みがあるからです。この機械学習には「情報の収集」と「情報の分析」という2つのステップがあり、一定のモデルを通じてAIは実用的な答えを生み出しています。
これらすべての作業には、「電力エネルギー」が必要です。しかも、モデルが強力で複雑になるほどその消費量は増していきます。たとえば、OpenAIが開発したGPT-3のトレーニングに必要なエネルギーは、平均的な米国の家庭に供給する電力の実に120年以上分に相当します。
つまり、生成AIが多方面に普及すればするほど、膨大な電力消費につながるということです。
その影響はデータセンター建設の加速や炭素排出量の増加にもおよびます。商品サービスのカーボンフットプリント(ライフサイクル全体のCO2排出量)の測定が企業に求められている今、広範囲な産業や企業で影響が生じると予想されます。
「エネルギー消費問題」が投資のチャンス…注目の「3分野」
幸いなことに、こうしたAIによるエネルギー消費問題の解決に向けたさまざまな取り組みがすでに始まっています。アライアンス・バーンスタイン(以下AB)は特に、次の3つの分野に注目しています。
1.ハードウェアとソフトウェア
たとえば、サーバーに搭載するプロセッサーを刷新して、電力使用量を抑えるという試みが行われています。
半導体メーカーのエヌビディアによると、従来のCPU(中央演算処理装置)をGPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)に変えることで、エネルギー消費量を大幅に少なくできる見通しです。
同じく半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も、経営目標に「エネルギー効率の引き上げ」を掲げています。
半導体チップの製造や検査を手がける台湾のTSMCやオランダのASMLでは、最先端のトランジスタ・パッケージ技術といったイノベーションを投入し、AIの機械学習の効率を高めようとしています。
電源管理に役立つ「パワー半導体」も、全体的な電力使用量の削減につながるという観点で投資家の関心を集めそうです。ABは特に、米国のモノリシック・パワー・システムズやドイツのインフィニオン・テクノロジーズといった企業の開発状況に注目しています。
他方、日本でもNTTが分野特化型の生成AIを開発しており、低消費電力という環境性能を売りにした製品の誕生が期待されています。
デバイスに直接搭載するエッジAIを手がけるLeapMind(リープマインド)では、新たな回路技術で消費電力あたりの演算量を従来の5倍に高めた半導体チップを生産しようとしていて、すでに海外の自動車メーカーから引き合いがあると報道されています。