(写真はイメージです/PIXTA)

辞めさせたい社員に退職勧奨をする場合、伝え方には特に注意しなければなりません。対応を誤れば、違法な「退職強要」であるとして損害賠償請求されるリスクがあるためです。今回は、実際に違法と判断され、会社側が損害賠償を払うこととなった3つの判例をもとに、スムーズな「退職勧奨」の方法と注意すべきポイントについて、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

退職勧奨を円滑に進める「8つのポイント」

退職勧奨が違法とされないためには、退職勧奨を注意深く進めなければなりません。違法と判断されないためには、次のような退職勧奨の言い方や進め方をするとよいでしょう。

 

1.面談の場所や人数、時間などに配慮する

まず、面談を設定する段階から注意しなければなりません。なぜなら、面談の方法によっては、退職強要やパワハラに該当してしまう可能性があるためです。

 

具体的には、次の点などに注意するとよいでしょう。

 

・面談をする場所:他の従業員がいる場所や、他の従業員へ聞こえてしまう場所での面談は避けましょう。
・面談をする人数:あまりにも大人数で面談をすることは避けましょう。相手へ圧迫感を与えてしまう可能性があるためです。
・面談をする時間:あまりにも長時間説得を続けることは避けましょう。

 

2.退職勧奨の理由を丁寧に説明する

面談では、まず退職勧奨をする理由を相手へ丁寧に説明しましょう。

 

たとえば、遅刻が多く注意をしても改善されないのであればその旨や、営業成績が振るわないのであればその旨などです。相手へ理由を明示することで、退職勧奨に納得してもらいやすくなる可能性があります。

 

ただし、先ほども解説したように、人格否定など相手の名誉を傷付ける言い方をすることのないよう注意しましょう。

 

面談に対応する人が面談時にうまく説明できるのか不安がある場合には、事前にメモを作成したりシミュレーションをしたりすることもひとつです。

 

3.伝え方に注意しつつ退職してほしい旨を伝える

退職勧奨の場では、会社として退職してほしいと考えているということをはっきりと伝えましょう。

 

ただし、退職が命令や強要であると誤解されてしまわないよう、伝え方には特に注意しなければなりません。

 

たとえば、「すぐに辞めてください」「本日をもって退職を命じます」など、直ちに退職を迫るような表現は避けるべきです。

 

また、「退職しなければ解雇します」「退職しなければ大幅に減給します」など、実質的に退職を選択せざるを得ない表現も後々のトラブルを生じさせる危険性があることから避けるべきでしょう。

 

退職勧奨に応じるかどうかはあくまでも従業員の任意であることをよく理解し、このことを従業員側にも伝えたうえで話し合いに臨みましょう。

 

4.相手が納得しやすい条件を提示する

単に会社を辞めてほしいと伝えたところで、従業側が応じる可能性は高くありません。従業員側としては、退職は生活の基盤を失いかねない一大事であるためです。

 

退職勧奨にあたっては、従業員側にとっても有利となる条件を提示すると、納得を得やすいでしょう。たとえば、退職金を上乗せするという条件や、転職先をあっせんするなどの条件が考えられます。

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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