お金は欲しいものやしたい体験と交換する道具
両親が事業に失敗してつらい子ども時代を送った場合も、お金に対するネガティブなイメージが色濃く残ります。
事業の失敗だけではなく、親が会社からリストラされて生活が一変し、お金の苦労を強いられた場合も同様です。
また、遺産相続などで、お金をめぐるトラブルやいざこざがあった場合も、「お金って怖い」「お金って悲しい」といったお金にまつわるメンタルノイズが植え付けられます。
それまで仲の良かった親戚のおじさんとお父さんが、お金のことでケンカをするようになったら、子どもはお金を悪者にして当然です。「お金がなければ奪い合うことはなく、みんなで仲良くできていたのに」と考えてしまうのです。
今はもう放送していませんが、かつて何十年にもわたって放送されていた国民的時代劇では、必ずお金を持っている人が悪者でした。
悪代官に「お主も悪よのう」と言われながら袖の下から賄賂を渡したり、おまんじゅうが入った菓子折りの下に小判を敷き詰めていたり。
その悪事がバレてしまった結果、斬られて殺されるという…。
そういう展開がお決まりでした。毎週見ていたら、もはや洗脳レベルで、お金も、お金持ちも悪いものとして植え付けられます。
2時間もののサスペンスドラマでは、大富豪は開始早々に殺されます。
大富豪の邸宅や船上でのパーティーで、乾杯した直後に「キャー!」という悲鳴があがるとともに、主人である大富豪が血を吐いて毒殺されている、など、よくある展開です。
現実の世界でも、お金持ちが犯した犯罪や、事業などで失敗した話はニュースで大きく取り上げられます。
それだけ視聴者が注目する話で、事業で失敗した人たちは「お金があったころは自分を見失っていました」などと、やはりお金を悪く言いがちです。
お金がらみの犯罪として、詐欺、強盗、横領、恐喝なども、日々世界中で起きています。ニュースとして報じられるのは仕方がありませんが、その数があまりに多いのが問題です。見ている人の心の中で、「お金があるとロクな目に遭わない」「お金は怖いもの」というネガティブなイメージがどんどん膨らんでしまいます。
お金は欲しいものやしたい体験と交換する道具でしかなく、悪いものでも怖いものでもありません。お金を悪用する悪い人が存在しているだけです。それなのに、お金ばかりが悪者にされてしまうのです。