還暦は自分を見つめ直すいい機会
■なぜ「還暦から筋トレ」なのか
還暦のあなたにこそ筋トレをすすめたい理由を説明しよう。健康のためとか、人生100年時代だからずっと元気にとか、ピンピンコロリとか、そんな寝言ではない。むしろ、それらすべてと真逆な目的だ。
といって、広い肩幅と厚い胸、細いウエストラインが必要なスーツ、たとえばアルマーニとかベルサーチとか、バブル全盛期に流行ったイタリアンな服をもう一度着たい。それを着て若い女の子をブイブイ言わせたい。そういう目的でもない(そういう目的も素敵だけど)。
①還暦過ぎたら「始められるスポーツ」は少ない
考えてみて欲しい。そもそも還暦から始められるスポーツに何があるだろう? 草野球に草サッカーや草ラグビー、ゴルフはすぐに思いつくがいずれもメンバーを揃えるのが面倒だ。還暦から始めてもいちばん下手くそなのは目に見えている。
実は、だからこそ流行っているスポーツが3つある。ランニングと自転車と水泳である。この先に3つ合わせたトライアスロンもある。かなり流行っている。
昼間のジムのプールに行ってみるといい。同じコースに入ろうとすると、口には出さぬが「入ってくるな! ここは私が泳いでるんだぁ〜」と、無言で睨むジジイばかりだ。
敵は偏屈なジジイだけではない。いちばんの問題は何か。誰かと、何かと競わなければならないことだ。自分の変化が、時間と競争でしか計れない。これじゃ還暦を迎えた意味がない。還暦から始める意味がない。どういうことか。
②還暦過ぎたら「……のため」に生きない
あなたも多分、かつては課長・部長、あるは先生と呼ばれたり巨匠、大家であったかもしれない。現在は再就職中で仕事は続けているかもしれないが、全盛期の仕事ぶりは過去の話。
つまり仕事では、もう十分その責務は果たしてきたのだ。家庭ではどうか。子どもがいればすでに独立、孫もいるかもしれない。仕事のため、子のため、妻のため、あるいは夫のため。還暦まで生きたというのは、その誰かのためにも生きてきたということだ。
しかしもういいではないか。残りの人生は自分ひとりのために生きると決めて許されないか。
自分とは何であるのか。何であったのか、何でありたいのか。
還暦というのは、そんなことを見つめ直す最後のチャンスだ。
まだ間に合う。思考はより具体的なものに沿うのが鉄則だ。抽象的なことを抽象的なレベルで考えると、悩みばかり増えて何も出てこない。だとしたら心ではなく体=肉体というのは最も具体的で唯一変えることのできる「自分」だ。男も女もこれは同じ。