石鹸入りたわし「ホーミングパッド」の珍しい失敗例
花王では、かつて「ホーミングパッド」という、家庭用の石鹸入りたわしを製造していたことがあります。
その「ホーミングパッド」の開発時の話です。
製造現場と経理部門、さらには研究所も一緒になり、品質は落とさずにいかにコストを下げるかというのを徹底的に議論しました。
経理部門のメンバーは、月に何度も現場を回り、議論を重ね、ついに一個10円という低い原価で製造することを可能にしました。
ただし、画期的な商品だったため、全国ネットでテレビCMを打ってしまえば、品切れを起こすことが明らかでした。まだ生産体制が整っておらず、需要に供給が追いつかないのです。
そのため、残念ながら「ホーミングパッド」の全国販売は延期となりました。ニーズが強い商品であることを理由に発売が延期になるとは驚きでしたが、これは花王にとっていい教訓となりました。
このように、順調に業績を伸ばしている花王でも、いろいろと失敗をしてきています。
ただ、失敗に対する対応の早さや、二度と失敗を繰り返さないための社内共有などが徹底されているからこそ、成長を続けてこられたのだと思います。
「ちゃんと失敗しているか?」
失敗は誰にとってもつきものです。部下はもちろん、上司でも失敗をしない人はいません。
大事なのは、失敗を生かすにはどうしたらいいかを考えることです。
アクサ生命保険の代表取締役社長の安渕聖司(やすぶちせいじ)氏は「大胆な仮説でトライしているか?」「ちゃんと失敗しているか?」の二つを常に意識しているそうです。
また、「大胆な仮説は失敗することが多いもの。だからこそ失敗をシステムに組み込むことが成功を導く」ともいっています。
安渕氏の言葉通り、仕事で成果を出すためには、トライアンドエラーを繰り返すことが必要不可欠です。失敗は決して恥ずかしいものではありません。
クロネコヤマトの生みの親である小倉昌男(まさお)氏も、「考えて考えて考え抜く。でもわからないことがある。その場合はやってみることである」と話しています。
重要なのは、仮説をつくって実行する、あるいは、途中経過をしっかりと見て、達成のために考え抜くことです。
埋めるべきは、目標と現状のギャップ。そのギャップはどうして生まれたのか。
理由はさまざま考えられるでしょうが、その原因を追究し、仮説を立てて検証して再度実行に移すことが大事です。
失敗した理由を考えるときにも、仮説は有効
では、失敗を自分の仮説に生かすには具体的にどうすればいいのでしょうか。それは、検証のときにできるだけ数多く理由をあげてみることです。
失敗した理由を考えるときにも仮説が役立ちます。
つまり、こうしたから失敗したのだろうということを、筋道立てて考えてみるのです。
成功した理由を追究する仮説はよく立てられますが、失敗した理由を追究する仮説はあまり立てられません。
失敗の理由を吟味することではじめて、修正点が浮かびあがってきます。そうしたら、そこを改善する案を考え、実行してみればいいのです。
修正点を見つけて対策をとり、トライアンドエラーを繰り返して行ってください。
阿比留 眞二
株式会社ビズソルネッツ 代表取締役