ビジネスにおける問題と課題の違い
「仮説」は自分の課題を解決するためのものであり、問題を解決するためのものではありません。
どういうことかといえば、課題と問題には明確な違いがあるということです。
たとえば、あなたがあるサービス系の企業に勤めていたとして、会社が「顧客満足度を上げます」とうたっているのに、実際には毎日クレームの処理に追われているような場合。これは、あなたにとっての問題でもありますが会社全体の問題でもあります。
それに対して、課題とは、その問題を解決するために「あなた」がやるべきこと、できることです。「クレームが多い」という問題を解決するために、あなたが営業系のチームリーダーであれば、「商品説明をもっと丁寧に行なう」などが課題になります。リーダーは問題を自分事に落とし込んで課題にし、それを解決する「仮説」を立てて実行していかなければなりません。
問題を課題に変化させられないリーダーは「自分が何をすればいいのか」、そして、「部下に何をやってもらえばいいのか」を認識できていないということなので、チームをうまく動かしていくことができません。
会社の問題を自分の課題に落とし込むことで、本当に解決しなければならないことが明確になり、実行に移しやすい仮説を立てられます。
今、自分の目の前にあるのは、問題なのか、課題なのかを明確にしてください。
もし、それが問題ならば、まず課題へと落とし込む一工程が必要です。
“より信憑性の高い”仮説を見つけるための3ステップ
課題を明らかにしたところで、いよいよ仮説の立て方を見ていきましょう。3つの簡単なステップを踏めば、効果的な仮説を立てられます。
ステップ1 課題をあげて、障壁となっている事象を整理する
ステップ2 「真のテーマ」を設定する
ステップ3 「Why」を4回繰り返す
ステップ1 課題をあげて、障壁となっている事象を整理する
まずは、課題をあげます。あなたが営業部のリーダーなら、「顧客一人あたりの商品購入額を2割アップさせる」などです。
課題を明確にするのは「それ以外のことには手をつけない」ということでもあります。余計なことは考えず、とにかく課題を解決するために必要なことだけを実行していくのです。
次に、課題を解決するために、障壁となっている事象をあげます。
「顧客一人あたりの商品購入額を2割アップさせる」ために、障壁となっている事象をあげてみると、次のようになります。
- 新規開拓ばかりで、顧客のリピート率が低い
- 顧客のニーズに合った提案ができていない
- 書類作成の際のミスが多い
ポイントは「客観的に」あげることです。主観的な思い込みはなるべく排除して考えます。
結果を出せないリーダーは、
- A君は仕事ができず、他のメンバーの足を引っ張っている
というように、主観的な思い込みをあげてしまいます。あくまで事実にもとづいた事象をあげなければなりません。
ステップ2 「真のテーマ」を設定する
次に、「真のテーマ」の設定を行ないます。
ステップ1であげた、課題解決の障壁となる事象のうち、最大だと思われるものを探します。
どれを選ぶべきか。最も現実的かつ直接的だと考えられるものです。
今回の場合、「書類作成の際のミスが多い」ではなく、「新規開拓ばかりで、顧客のリピート率が低い」か「顧客のニーズに合った提案ができていない」を選ぶべきです。どちらかが「真のテーマ」です。
ステップ3 「Why」を4回繰り返す
真のテーマに対して、「Why」を最低4回、繰り返します。
なぜ、なぜ、なぜ…と繰り返していくことで、どんどん仮説を具体的にすることができます。
たとえば、「顧客のニーズに合った提案ができていない」が「真のテーマ」であったとして、それに対して、「Why」を4回繰り返すと、次のようになります。
【Why1回目】「顧客への説明が不十分だから」
【Why2回目】「新商品の情報を把握できていないから」
【Why3回目】「新商品の情報が発売ぎりぎりまで回ってこないから」
【Why4回目】「営業部門と開発部門の間で情報交換がほとんどないから」
全く予想もしなかったところに、原因が隠れていることがわかりました。
つまり、「顧客一人あたりの商品購入額を2割アップさせるためには、営業部門と開発部門の間で情報交換がほとんどないからではないか─」という仮説が立ったということです。