(※写真はイメージです/PIXTA)

「相続人がいない遺産」はどうなるのでしょうか? 佐伯知哉氏(司法書士法人さえき事務所 所長)が解説します。

「相続人がいないケース」とは?

相続が発生したとき、相続人の方がいらっしゃれば、原則、亡くなった方の遺産は相続人の方へ引き継がれます。しかし、亡くなったのが身寄りのない方であったり、相続人全員が相続放棄をしたりなどの事情から、相続人がいない場合もありますよね。

 

相続では、原則、現金や不動産など「プラスになる遺産」だけではなく、借金などの「マイナスの遺産」も引き継がなくてはなりません。場合によっては、相続することで損を被るケースもあるでしょう。そこで、相続人が「相続しません」と裁判所に申し立てることで、相続人としての権利を放棄する、つまり「最初から相続人ではなかった」ことにできます。これが相続放棄です。相続人全員が相続放棄をすれば、誰も相続人がいない状態になります。

「誰も継がない遺産」の行く末

相続人がいない場合、遺産はどうなるのでしょうか?

 

まず、「相続財産管理人」を選任するよう裁判所に申し立てます。申立てを行うのは、たとえば故人にお金を貸していた人など、「亡くなった方と利害関係にある人」です。

 

お金を貸していた人は、本来であれば、相続が発生したら相続人に対してお金を返すように請求することが可能です。相続人がいらっしゃらないケースでも遺産自体はあるわけですから、その中から回収したいわけです。そこで債権者(利害関係人)は「相続財産管理人をつけてください」と裁判所に申し立てをすることができます。

 

相続財産管理人に選任されるのは、弁護士などが多いです。裁判所によって相続財産管理人に選ばれたら、その誰も相続しない遺産をいったん預かる形になりますが、すぐ債権者にお金を払うわけではありません。

 

まず相続財産管理人は、他にも債権者などの利害関係者がいないかどうかを捜す「公告」を官報*に出します(*官報…国が発行する機関紙)。この公告期間は2ヵ月(以上)です。

 

また、その後、相続人がいないかどうかを捜す公告も出します。実際のところ、相続財産管理人を選任する前に相続人調査をしっかり行っているため、公告の時点で相続人が出てくることはまずありません。しかし万が一相続人がいれば、今度はその相続人に財産を全部引き継がなくてはなりませんから、改めて相続人調査を行います。

 

相続人を捜すための公告期間が終わったら、改めて期間を決めて、特別縁故者がいたら3ヵ月以内に申し出るようさらに公告を出します。特別縁故者とは、亡くなった方の相続人ではないけれども面倒を見ていた人などです。この3ヵ月間は、そのような人がいれば財産分与の申立てをするように、と設けられた期間です。

 

ここまでを経て、遺産に関して色々ともらえる人がすべて出揃います。まとめると、まずは債権者などの利害関係人、そして相続人、最後に特別縁故者です。これらの人々について、裁判所から“該当者がいれば期間内に申立てをするように”と公告を出し、法律で決まった範囲内で出てきてもらいます。

 

関係者が出揃ったら、相続財産管理人が債権者への弁済などを行います。このとき、遺産が現金であればともかく、不動産などがあった場合は、裁判所の許可を得た上で、相続財産管理人が売価換価してお金に替えます。遺産がすべてキャッシュになった段階で、相続財産管理人が債権者などに対して諸々のお金を払っていきます。

 

すべて支払ってもなお財産が残った場合は「国庫」に返納され、最終的には国に戻る形になります。

要注意!「相続放棄したら後はノータッチ」と限らない

以上のように、相続人がいなければ相続財産管理人を選任するよう申立て、利害関係人や相続人などの関係者全員に出てきてもらい、さらに、遺産の中に、不動産などの現金以外のものがあった場合には、それを全部売却し、お金に替えて分配する…という流れになり、かなりの手間がかかります。期間も1年以上に及ぶことも珍しくなく、結構大変です。

 

実は、もともと身寄りがないケースより、全員が相続放棄して相続人がいなくなったというパターンのほうが結構あります。

 

最後に相続放棄をした人は、放棄した後はもう無関係、とはいきません。相続財産管理人が遺産を引き継ぐまでの間は、財産管理権が残ってしまいます。

 

相続放棄をした後であっても、一度管理権が発生してしまうと、次の管理者(相続財産管理人)に引き渡すまでは、自分の財産と同レベルの注意を持って管理・保存しなくてはいけないという義務が発生します。

 

たとえば、もし相続放棄した空き家の管理責任が生じていたにも拘わらず、空き家が倒壊するなどして第三者に損害を与えた場合は、管理責任者として損害賠償請求を命じられる恐れもあります。このように「相続放棄したからもう何も知らない」とはいかない場合もあるので、ご注意ください。

 

【動画/相続人が全員相続放棄したら!? 遺産の行く末はどうなるの?】

 

佐伯 知哉

司法書士法人さえき事務所 所長

 

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