(※写真はイメージです/PIXTA)

現在、日本は少子高齢化が進む一方、新型コロナのような予想しえない事態が地球規模で起こっています。ロシアのウクライナ侵攻に見られるように、国際情勢もものすごい勢いで動いています。今こそ、田中角栄以上の新しい構想力を持った政治家の誕生が望まれています。ジャーナリストの田原総一朗氏が著書『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)で解説します。

「角栄ブーム」の背景には何があるのか?

もう1つは巷にあふれる田中角栄に関する書籍の多くがテーマにしていることですが、「人間としての魅力」です。角栄は誰でも受け入れるスケールの大きさがありました。たとえそれが敵対する相手であったとしてもです。石原さんも『天才』のあとがきの中で、角栄の度量の大きさを物語るエピソードを記しています。

 

かつての自民党には、そうした懐の深さがありました。昭和の派閥全盛時代は、田中派と大平派がハト派、福田派と中曽根派がタカ派で、どちらかが主流派になれば反対の派閥が非主流派となるといったように、バランスがとれていました。自民党内で様々なバックボーンや主張を持つ実力者たちによって活発な議論が行われていたため、当時、野党に関心を持っている人はいませんでした。

 

■「失われた30年」を打開するために、政治家は今こそ構想力を発揮せよ

 

現在まで続く「角栄ブーム」の背景には、現在の政治家に構想力が足りないからだと思います。

 

安部晋三元首相が打ち出したアベノミクスは、第1の矢の金融政策と、第2の矢の財政政策が奏功して株価が上がりました。しかし、第3の矢である成長戦略のための構造改革は進みませんでした。構造改革には「改革した後の世界をどうするのか」という構想が必要なのに、そこを描き切れなかったのです。

 

結局、政治家の構想力のなさが、平成という時代を「失われた30年」たらしめ、この間、経済がまったく成長しないという特異な状態に日本をさせてしまったのではないかと思います。

 

もし今、田中角栄が首相であれば、閉塞感あふれる日本の現状に対し、何かしら新しい構想を打ち出して、国民に見せていたことでしょう。

 

では、なぜ角栄のような政治家が出てこないのか。それは現在の政治家が守りに入ってしまったからでしょう。角栄は何もない焼け野原から出発しましたが、今の政治家は守るものがたくさんあって、チャレンジしようとしないのです。自民党も、現在の自民党支配体制をどうすれば維持し続けられるかが目的となってしまっています。

 

田中角栄が首相になって今年で50年が経ちましたが、残念ながら彼を超える構想力と行動力を持った政治家が、与党にも野党にも生まれていないのが日本の現状です。

 

角栄の時代と違って、現在は国内の少子高齢化が進む一方、地球環境にも配慮して経済活動をしなければならないし、新型コロナのような予想しえない事態が地球規模で起こっています。そして、アメリカ国内の政治的分断、イギリスのEU離脱、中国の台頭、ロシアのウクライナ侵攻に見られるように、国際情勢もものすごい勢いで動いています。

 

このような時代にあって、どのような成長戦略を描くか。今こそ、田中角栄以上の新しい構想力を持った政治家の誕生が望まれています。

 

田原総一朗
ジャーナリスト

 

前野 雅弥
日本経済新聞記者

 

 

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本連載は田原総一朗氏、前野雅弥氏の著書『田中角栄がいま、首相だったら』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

田中角栄がいま、首相だったら

田中角栄がいま、首相だったら

田原 総一朗 前野 雅弥

プレジデント社

2022年は、田中角栄内閣が発足してからちょうど50年にあたる。田中角栄といえば、「ロッキード事件」「闇将軍」といった金権政治家のイメージが強いが、その一方、議員立法で33もの法案を成立させたり、「日本列島改造論」に代…

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