(写真はイメージです/PIXTA)

口座名義人が死亡すると、銀行の口座が凍結されます。生活費などの当面の資金をすべて亡夫の口座で管理していた場合は、どのように対処すればよいのでしょうか? 相続に詳しいAuthense法律事務所の堅田勇気弁護士が詳しく解説します。

口座凍結される理由

口座名義人が亡くなった場合、なぜ金融機関は口座凍結を行うのでしょうか? そもそも大前提として、金融機関はいくら家族であっても本人以外の第三者が口座を使用することを想定していません。故人の口座がそのまま使えてしまっては、マネーロンダリングなど犯罪に使われるなどリスクが高くなってしまいます。そのため、本人が亡くなった時点で口座がいったん使えなくなることは当然だといえます。

 

また、口座凍結がなされるのには、次の2つの理由もあります。

 

相続財産を確定させるため

相続が起きたあと、いつまでも口座が動いていては、入出金が繰り返されて相続財産の確定が困難となってしまうでしょう。死亡時点で口座凍結をすることで、死亡時点での相続財産を確定しやすくしています。

 

相続争いを防ぐため

相続が起きてからも自由に入出金ができるとなれば、キャッシュカードを預かっている一部の相続人が勝手に預金を引き出すなどしてしまうリスクが高くなります。勝手な預金の引き出しは、相続争いの原因となることが少なくありません。

 

口座名義人の死亡を知りながら、金融機関が口座凍結をしないでいるあいだにキャッシュカードで預金を引き出されてしまうようなことがあれば、金融機関がほかの相続人から責任を追及される可能性もあるでしょう。

口座凍結前に預金を引き出す問題点

口座名義人が亡くなっても、金融機関が死亡を知らないあいだは、口座凍結はされていません。そのため、口座凍結がされる前であれば、事実上、手元にある故人のキャッシュカードを使って預金を引き出すことはできてしまうでしょう。夫婦や同居の親子であれば、生前から預金の管理や引き出しを任されていることも多く、生前の延長で特に疑問を抱くことなくキャッシュカードでお金を引き出してしまうこともあるかもしれません。

 

しかし、故人のキャッシュカードで故人の預金を引き出すことには、次のような問題やリスクがあります。

 

キャッシュカードを本人以外が使うことは金融機関の「規約違反」になる

銀行口座を開設する際には、口座の利用に関する約款が交付されることが一般的です。大多数の金融機関は、この約款において本人以外のキャッシュカードの利用を禁じています。つまり、故人のキャッシュカードを勝手に使用することは、ほとんどの場合で金融機関の規約違反となります。

 

ほかの相続人から「使い込み」を疑われ、相続争いに発展する危険性がある

口座名義人が亡くなった時点で故人名義であった財産は、原則としてすべて相続の対象となります。死亡時点で口座に入っていた預金も例外ではありません。そのため、一部の相続人がキャッシュカードで勝手に預金を引き出した場合には、ほかの相続人から相続財産の使い込みを疑われることになりかねません。いったん疑義が生じるとこれが原因で疑心暗鬼となり、相続争いに発展する可能性があります。

 

「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性がある

被相続人の口座から預金を引き出したからといって直ちに単純承認とみなされるものではありませんが、引き出した預金を相続人自らのために使った場合はもちろん、過大な葬儀費用に充てたりした場合などにも単純承認とみなされる可能性があります。また、裁判では単純承認にあたらないとされるケースであっても、債権者から単純承認を争われ紛争になる可能性もありますので、注意が必要です。

 

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