中古不動産の価値を決めるのは、「立地」と「築年数」だけではありません。ケースによっては、新築同然の値がつくこともあります。本記事では、埼玉県春日部市にある自宅を売却した仁川さん(女性・60代※仮名)の事例を紹介します。仁川さんの物件は、税法上の耐用年数22年を超える「築25年」の木造建物でした。しかし、大事に使い、維持管理・修繕を怠らなかったため、実際には新築同然ともいえる状態だったのです。

専門家による家の「丸ごと鑑定」で驚くべき結果が…

仁川さんを担当することになった不動産エージェントBは、仁川さんの物件を実際に視察した結果、築25年であるにもかかわらず新築同然の状態であることを確信しました。

 

そこで、改めて仁川さんと話し合いの場を設け、最適な価格で売却するためのプランを提案しました。インスペクション、つまり住宅診断です。

 

建物に詳しい専門家が住宅を調査、劣化具合や補修すべき点などを評価し、建物の価値を正しく測定することを主な目的とします。本来インスペクションは買主側が実施します。建物に不備がないか精密に検査し、最終的な購入価格を決めるためです。

 

このインスペクションを、売主側があえて実施することを提案した理由は、築25年とは思えないほど建物の劣化が軽微であったからです。インスペクションを行い、劣化や不具合がほとんど認められなければ、一般的な築25年の建物以上の価値があるというお墨付きを専門家からもらえることになります。担当エージェントBは、その住宅診断報告書を担保にして不動産に付加価値をつけるプランを立てたのです。

 

インスペクションによって屋根裏や床下など目の届かない部分で悪いところが見つかる可能性はあるが、家の現状をすべて可視化することで、この家の価値を正しく評価し、心から欲しいと思う方に売却することができると考えたのです。

 

これはある種の賭けでもありました。売却価格を上げるためにインスペクションをした例は過去にほとんどありません。極めて例外的な試みであり、思惑どおりうまくいく確信もありません。

 

その一方で、たとえ思わぬ不具合などが見つかっても、査定価格の1,700万円を下回ることはないはずだと予想していたのです。新築と見間違うほどの建物状態だったからこそ、ここまで自信をもって提案することができました。

 

担当エージェントBのプランニングに、仁川さんはその場で同意し、数日後には一級建築士2人を派遣してのインスペクションが実施されました。普段のインスペクションでは、建物の各部の現状を調べて報告書をまとめるのですが、今回はさらに特別なチャレンジを行いました。

 

各建材のグレードも調査し、劣化度合いを細かく見極め、現状の価値を正確に計測したのです。例えば以前屋根の修繕に100万円の費用を掛けていたとして、インスペクションで現在の劣化度合いが30%程度と評価できれば、屋根の残存価値は70万円と算出することができます。

 

このような計算を、外壁や内壁や水回り部分といった目に見える部分はもちろん、屋根裏や床下や構造体まで細かく施し、残存価値を足し合わせていきました。減価償却のような机上の減点方式ではなく、実地調査を行ったうえでの加点方式です。

 

結果、仁川さんが10年間大切にしてきた築25年の家に、1,000万円の価値を見出すことができました。内訳は大まかに、外装と屋根で500万円、水回り関連で300万円、クロスやフローリングなど内装部分で200万円です。

 

つまり仁川さんの不動産は、1,700万円ほどというほぼ土地だけを評価した価格に、1,000万円を上乗せした2,700万円ほどの真価値を見い出したことになります。

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