不動産がもつ本質的な価値を「可視化」する
売主から不動産売却を任された「不動産エージェント」の仕事はただ一つです。「不動産の価値をどのように最大化して売るか」をとことん考えることに尽きます。
価値の最大化の一つとして「可視化」が挙げられます。可視化は不動産に関する豊富な知識や経験、さらに専門家たちとのネットワークをもっていないと繰り出すことができない、不動産エージェントならではの必殺技です。
さて、「築25年の一戸建て」と言われたら、外壁が紫外線で劣化していたり、屋根が一部が欠損していたり、内装は壁紙クロスがところどころ剥がれていたり、フローリングの傷が目立っていたりと、経年劣化が随所に見られる可能性が高いです。しかし、「築25年の一戸建て」と一口に言っても、住んでいた方がどれだけ大切にしてきたかで状態は大きく変わるものです。実際に見てみたら想像よりもきれいなこともあれば、逆に想像以上にボロボロであることもあります。
そして、ここが大切なことなのですが、その家の状態を目の前にすることで初めて、建物の価値を感じることができます。単なる間取りや築年数といった表面的なスペックだけでは、建物の本当の価値を知ることなどできません。
これを逆手に取ると、各建築素材の具合や、屋根裏・床下の見えないところに至るまで、不動産に関わるデータをすべて可視化することができれば、建物の真の価値を掘り起こすことも可能ということになります。築年数が古い家であっても、建物の状態によっては、築浅の家と同等の価値を見出すことも不可能ではないのです。
このような建物の精密な可視化は、いわば諸刃の剣です。不動産のすべてを丸裸にしてしまうため、いいところも悪いところも洗いざらい調べることになります。もし悪いところばかり見つかったら、かえって不動産の価値を下げかねません。しかし一方で、不動産のすべてを包み隠さず伝えることが、買い手サイドにとって安心材料につながり、不動産の魅力をより引き出してくれることにもなります。
「築25年のわが家」の査定価格に納得できない!
仁川さん(女性・60代※仮名)は、埼玉県春日部市にある、当時築15年の土地付き中古戸建て住宅を2,600万円で購入しました。それから10年後、自身の事情から転居を決め、築25年を迎えた我が家を売却することになりました。
不動産仲介会社を5社ほど選び査定依頼したところ、平均して1,700万円程度の売却価格が提示されました。立地と築年数だけで算出された各社の査定に仁川さんは納得できませんでした。より適正な不動産価値を見出してくれるところはないだろうかと探しているうちに不動産エージェントの存在を知り、相談に訪れました。
その内容とは、「10年前に購入して以降、傷をつけないよう大事にして修繕も念入りに行ってきたのに、購入時よりも900万円も安い査定なんて、絶対に納得できない」というものでした。
その査定では家の価値をほとんど評価せず、土地の価値だけで売却価格を見積もられ、その方法にも不満を抱いていたのです。
本件を担当したのは、不動産の隣市に住んでいたことがあるエージェントBです。不服の要因を客観的な立場から探るため、実際に物件を視察することからスタートしました。