売主に寄り添えていない不動産屋に共通するテクと口グセ
仲介担当者の執拗な「囲い込み」により、売主が被り得る実質的なリスクがあります。
例えば、売主が5,000万円での売却を希望している物件があったとします。仲介を任された担当者はまず売主の要望どおり5,000万円で募集をかけます。自社で広告展開するとともに、ルール通りレインズでも情報を公開します。両手取引を狙っているので、担当者が設定したレインズの広告掲載区分は「不可」です。
売り出し後、同時期に2件の問い合わせがありました。1件はレインズを見た他社の不動産仲介会社で、「5,000万円での購入を希望している方が弊社の顧客にいる」とのことです。もう一件は自社の広告を見て問い合わせてきた個人の方で、「4,500万円ならぜひ買いたい」と値下げ要求がありました。
さて、不動産をあずかっている担当者はどちらと交渉を進めていくかというと、売主にとってはもちろん前者の5,000万円と話を進めたいところです。しかし、担当者は後者の4,500万円を選びます。なぜなら後者の取引は自社で集客した個人の顧客であり、交渉成立となれば両手取引が達成できるからです。
実際に数字で表してみます。ここでは仲介手数料を3%とします。前者の5,000万円で片手取引にて売買した場合、不動産仲介会社に入る手数料は5,000万円の3%に当たる150万円です。
他方、後者の4,500万円の両手取引であれば、4,500万円の3%に当たる135万円を、売主買主の双方から受け取り、計270万円を得ることができます。不動産仲介会社は後者の両手取引のほうが2倍近く儲かるのです。
このように「いくらで」「誰に」売るかにおいて、売主と不動産屋との間ではまったく利害関係が一致しないケースが当然のように起こりうることが、数字にすると明白になります。
不動産仲介会社の具体的な囲い込みの行動としては、5,000万円希望で問い合わせてきた他社にはすでに先約があるなどと言い訳をし、4,500万円希望の個人の買い手候補と交渉を進めていきます。売主には「5,000万円だとなかなか問い合わせが来ないものの、4,500万円なら今すぐ買いたいという方がいる」と虚偽の報告をして4,500万円での取引へと誘導していきます。
売主としても早く売ってすっきりしたいですから、「500万円くらいの値下げならいいか」と思案します。ここでさらに担当者は「少しくらいの値下げは仕方ないもので、不動産業界ではよくあること」だと後押しするのです。さらに「不動産売買というのは交渉ありきです。そういうものですから了承してほしい」などと付け加えて、売主も自分を納得させ、値下げを受け入れます。仲介担当者は両手取引を見事に成し遂げ、もはや任務完了といった気分です。
「不動産業界とはそういうものだ」という表現は、自分都合で交渉を進めていく不動産仲介担当者の口癖です。本当はそういうものではないのですが、不動産の素人である売主には知る由もありません。担当者に言われるがまま、うまく丸め込まれてしまい、損していることにすら気づかないことがほとんどなのです。
大西 倫加
さくら事務所 代表取締役社長
らくだ不動産株式会社 代表取締役社長
だいち災害リスク研究所 副所長
長嶋 修
さくら事務所 会長
らくだ不動産株式会社 会長
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