(※写真はイメージです/PIXTA)

中国経済はドルなしでは回らない体制になっているので、ロシアに協力して米国から二次制裁で金融制裁を受けることになれば、たちまちドルが不足して輸出入に支障をきたし、中国経済は大ダメージを受けることになります。ジャーナリストの田村秀男氏が著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

ロシアは半導体なしで戦えるのか

■中国も表向きは慎重な姿勢を保つしかない

 

ウクライナ侵攻でロシアに対する経済制裁が実行されるなかで、色々なものがロシアにはいってこなくなりました。コカ・コーラがはいってこなくなったからといってロシアは少しも困らないのですが、半導体がはいってこないのは、かなりの痛手です。

 

米国をはじめとする西側諸国は、ウクライナ侵攻に対する経済措置の一貫でロシアへの二次制裁のリスク…中国が簡単にはロシア支援に回れない理由を規制する措置をとりました。

 

現代の産業にとって半導体は不可欠な存在であり、その供給を制限されたためにロシアの企業はたちまち窮地に立たされます。戦争をするために欠かすことのできない兵器ですら、半導体の固まりのようなものですから、産業だけでなく戦争そのものにも影響を及ぼします。

 

この制裁は、ロシアにとってはかなりのダメージであるはずです。

 

ロシアとしては喉から手がでるほど欲しい半導体ですから、どうにか調達したい。調達先として、まず考えられるのが中国でした。中国は経済制裁に参加していませんから、ロシアに協力しようと思えばできる立場ではあります。

 

しかし、中国の半導体メーカーは表向きには対露供給を否定していますが、真っ赤なウソのようです。実際には3月以降、対露半導体輸出が急増しているようで、中国側がそれを隠したがるのは米国からの制裁を恐れるからです。

 

3月23日にジーナ・レモンド米商務長官は「中国企業が米国の技術を利用して製造した半導体をロシアに供給すれば、米国は輸出規制の実施で対応する」と述べ、8日にも同様の警告を発しています。中国の半導体企業は米国の技術を使った製造技術に依存しており、中国がロシアに半導体を提供するようなことがあれば、製造技術の使用を拒否するというわけです。日欧の企業などが米国の技術が採用されている製造装置を中国に提供していても、制裁の対象になります。

 

そうなると中国の半導体製造は停止に追い込まれることになり、自国の産業界にも大ダメージを与えてしまいます。さすがに中国も、迂闊には動けないわけです。

 

半導体だけでなく、ほかの分野でも、中国はロシアへの協力に足踏みしています。ビザやマスターカードといったクレジットカード会社がロシアから撤退するなかで、中国のクレジットカード会社にとっては商機なはずなのですが、進出する気配がありません。

 

中国の国有大手のクレジットカード会社「銀聯」の関係者に「ロシアに進出しないのか?」と聞いてみましたが、「できないんですよ」という返事でした。中国共産党から「ロシアとの取引は慎重に」という指示がでているということでした。しかし、半導体の例のように水面下での対露協力は大いにあり得るのです。

 

クレジットカードだけでなく、あらゆる分野でロシアとの取引は制限されています。中国は世界有数のドローン生産国なのですが、その輸出も規制されています。4月26日にドローンメーカーとしては世界最大手である中国の「DJI」は、ロシアでの事業を停止すると発表しています。

 

ただし、ロシアに対してだけでなく、同時にウクライナとの事業も停止しています。ウクライナでの戦闘には、かなりのドローンが使用されており、ウクライナがドローンでロシアの戦車に大きな被害をもたらしていると報道されてもいますがこれも信用できません。

 

ウクライナでの事業継続は、ウクライナへの兵器支援と同じことになるので、さすがにロシアとの関係を考えればウクライナでの事業を継続するわけにはいきません。しかし、同時にロシアをあからさまに軍事支援することも避けています。

 

その理由は、米国による二次制裁です。なぜ二次制裁が怖いかというと、中国が米国のドルに依存する経済になってしまっているからです。つまり、中国経済はグローバル金融を支配するドルに対して極めて弱い構造になっているのです。ただし、後述しますが、バイデン政権は基本的に弱腰です。中国側はそこを衝いてくるのです。

 

次ページ世界の本音は「いい加減に矛を収めてくれ」

本連載は田村秀男氏の著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本経済は再生できるか

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田村 秀男

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