(※写真はイメージです/PIXTA)

労働人口の減少による人手不足を解消する有効策として「多能工化」という企業の取り組みが注目されています。そもそも「多能工化」とはどのような取り組みなのでしょうか? メリットやデメリット、導入の手順などをみていきます。

 

「多能工化」とは

多能工化とは、1人で複数の業務を担当できる能力を持った人材=多能工を教育・育成し、社員が状況に応じて複数の業務を遂行することで、労働環境の改善や生産性の向上につなげる取り組みのことです。これを「兼任化・マルチスキル化・マルチタスク」という言葉で言い換えることもできます。

 

多能工化の反対は「単能工」

これに対し、多能工化が注目される以前は、多くの社員は単能工として1人がひとつの業務を専門的に進めてきました。いわば業務のスペシャリストという存在であったわけですが、同時に業務が属人的となる傾向があります。そのため、担当者が不在になると業務が滞るなど、生産性を高めることが難しくなります。

多能工化するメリット

多能工化によってもたらされる、具体的なメリットしては次のようなものがあります。

 

■業務負荷を平準化

多能工化による最大のメリットが、業務負荷を平準化させられることです。一部の部署や社員に偏っていた業務を他の社員にも担当させられるようになり、業務量が平準化し、業務負荷が重かった社員の負担軽減が可能になります。また、繁忙期においても業務の進捗度合いによって人員を適切に配置できるので、一時的に業務の少ない部署と多い部署が発生するといった不平等な状況が生まれにくくなります。

 

■リスクを回避

複数の社員が業務を遂行できることで、業務の属人性が低減し、安定して業務を継続することができるようになります。また、多能工化の課程で手順や技能を教育する必要が発生するため、業務における課題や改善策が顕在化しやすくなるという側面もあります。これによって業務の合理化や手順の見直しも行うことができるため、会社としてはこれまで見えていなかったリスクを洗い出すことも可能になります。

 

■柔軟性の高い組織づくり

社員が幅広いスキルを習得するため、会社の経営方針や戦略の変更があっても、スピーディーにその業務内容を合わせることができる組織になります。結果として、ニーズの変化に対応した商品やサービスを柔軟に提供できるようになり、市場における競争力を維持できるようになり、優位に事業を継続できるようになります。

 

■企業内に一体感とチームワークが生まれる

社員のほかの部署や業務への理解が深まり、多角的な視点を持つことができるようになります。単能工の職場ではそれぞれが職人的な存在となり、担当外の業務に対する無関心が生まれがちですが、多能工化で複数の業務を担うことで、同僚の気持ちや立場も理解できるようになり、企業内に一体感とチームワークが生まれることが期待できます。

 

■働き方の改革・社員のキャリア形成

業務の標準化に伴い、一部社員に偏っていた労働時間の削減や、休暇がとりづらい環境の改善につながります。また、複数の業務を担当するために、社員はさまざまなスキルを習得することができます。多くのジャンルの業務に挑戦しやすい環境が整い、社員の可能性を広がることで、特に新人教育においてポジティブな動機付けにつながるという、キャリア形成の面でも多くの恩恵があります。

 

このような多くのメリットが会社にもたらされることで、サービスや製品の品質向上、納期の遵守といった結果につながり、より多くの利益を生み出すことが可能となります。

 

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