「社長として」まず学ぶべきこと
最近は会社を継いだ、または継ぐ予定の方からのご相談が増えております。ご相談のなかで、社長としてやっていくためになにを勉強するべきか? という話になることがあります。世のなかには、後継社長向けの塾やら交流会がたくさんありますね。それら"座学"で学ぶことも必要かも知れませんが、そんなことよりもずっと大切なことがあります。それは、"継いだ、または継ぐ予定の会社について勉強する"ということです。
つまり、一般にいわれるような経営管理や財務、営業、人材管理などのような個別業務について勉強する前に、いま会社がどのような状況にあり、どこにチャンスがあり、どこにリスクがあり、どこに向かうのか? といったような会社の全体像について向き合う、ということです。なぜならば、それこそが社長としての仕事だからです。
いい方を変えれば、交流会や塾に通って、"お勉強"するのではなく、自分の頭を使って、事業そのものに真摯に向き合うということになります。そしてもし、自社に足りないことや自分に足りないことがわかれば、それを身に付けるために塾などに通うのはいいかも知れません。
では継いだ、または継ぐ予定の会社の全体像を理解するためにはどうすればいいでしょうか。会社がどのような状況にあり、どこにチャンスがあり、どこにリスクがあり、どこに向かうのか? を考えるための質問項目をご紹介します。ぜひこれらの質問についてじっくり検討してみてください。
継ぐ会社のビジョンは明確ですか?
社長の仕事を突き詰めれば、
2. 現在地を確認し、
3. 向かう先と現在地のギャップを埋めるためにあらゆることを行うこと
です。自社が向かう先、それがビジョンです。ビジョンを明確にしなければ、社長としての仕事は始まっていません。以下の質問を考え、継ぐ会社のビジョンをイメージしましょう。
1.「会社は、究極的にいうとなにを販売していますか?」
どんなビジネスであっても、顧客の人生をよりよくするために存在しています。顧客は、商品やサービスの機能に期待してお金を払うのではなく、将来、自分の人生がよりよくなることを期待してお金を払います。その期待が不明確であれば、顧客は購入を控えるか、ほかの商品を購入することになります。自分たちが本当はなにを販売しているのかを理解すれば、顧客がさらに購入してくれるためになにをしなくてはいけないかがわかります。
2.「会社の存在意義はなんですか?」
存在意義とは、あなたの会社が誕生する前とあとで、いったいなにが変わるのか? に応えるものです。会社を継ぐ際には、「もし自社が無くなったら、世のなかはなにを失うのか?」と考えてみましょう。世のなかでは大きすぎる場合には、この地域はなにを失うのか? 顧客はなにを失うのか? と考えてみましょう。
3.「将来の売上や利益はどれくらいですか?」
将来、あなたが「この仕事をやり遂げた」と思える状態になったとき、売上や利益はどれくらいになりますか? 具体的にイメージしてみましょう。
4.「将来の人材はどんな人たちですか?」
将来、あなたが「この仕事をやり遂げた」と思える状態になったとき、あなたの会社ではどんな人たちが働いていますか? 具体的にイメージしてみましょう。
5.「将来の個人的な状況はどうですか?」
将来、あなたが「この仕事をやり遂げた」と思える状態になったとき、あなたの個人的な状況はどのようなものになっていますか? どのような地位で、どのような専門性を持ち、どのような経済状態ですか?
6.「将来どのようにして知られていますか?」
将来、あなたが「この仕事をやり遂げた」と思える状態になったとき、あなたの会社がニュースや番組で取り上げられると考えてみましょう。どんなニュースや番組内容になりますか?
7.「継ぐ会社をゼロからやり直せるとしたら、なにを変えたいですか?」
私の師匠のマイケルE.ガーバー氏によれば、事業はいつでも再創造できます。つまり、現状がどうあれ、いつでもゼロからスタートできるのです。いまはこうだから、過去にこんなことがあったから、といって理想を諦める必要はありません。自分が創業者になったつもりで発想してみましょう。
8.「会社のビジョン実現には、どのようなスキルや能力が必要ですか?」
いたずらに能力やスキルを身に付けても意味がありません。どのようなスキルや能力が必要かわかったら、あなたに足りないものがどれなのか、考えてみましょう。能力やスキルは、理想と現状のギャップを埋めるために必要なものです。