(※写真はイメージです/PIXTA)

労働人口の減少による人手不足を解消する有効策として「多能工化」という企業の取り組みが注目されています。そもそも「多能工化」とはどのような取り組みなのでしょうか? メリットやデメリット、導入の手順などをみていきます。

 

多能工化の導入事例

多能工化を実際に導入した企業の事例を挙げておきます。皆さんの企業においてどのように実現できるのかをイメージする参考としてください。

 

株式会社ユニバーサルポストの事例(製造業、社員数150名)

以下、同社の資料より抜粋してご紹介します。

 

■導入前の課題

作業が属人化し、スキルのある社員に業務が集中していた。チーム単位でのマネジメントができず、関連部署との連携も不足していた。業務領域が広がる中、社員からは人事評価制度の見直しを求める声が上がっていた。

 

■取り組み内容

業務の棚卸しによって作業工程や技術レベルを可視化し、育成計画表を作成した。また、業務分析によるムダの洗い出しと改善策を実施した。さらに、経営トップ自らが、多能工化が会社の重要取組事項であることを宣言するとともに、働き方改革も評価対象に含めた、新評価制度への見直しを進めた。

 

■取り組みの成果

担当以外の業務も経験したことで、新たな知識やスキルを習得でき、お互いをカバーし合える職場環境を実現した。生産性を念頭に置いて、効率的に業務を行う意識が部署内に芽生えた。社内全体では、会社の方針を全社員の9割が理解し、有給休暇取得率が約12%向上、月当たりの残業時間は約5時間削減、改革の進展度を全社員の7割が実感できるようになった。

 

株式会社星野リゾート(サービス業、社員数2,000人)

星野リゾートはホテル業界では珍しく、多能工化を実現していることで有名です。

 

■導入前の課題

ホテル経営において、清掃と調理に労働が集約し、昼間は待ち時間となる「中抜けシフト」が常態化して生産性を損ねていた。また、「大卒はフロント、料理専門学校卒業者だけがレストラン」という根拠のない固定観念から脱却し、顧客満足度の向上につながる改革が必要となっていた。

 

■取り組み内容

全員がフロント・客室・レストランサービス・調理(補助業務)をこなせるように教育した。それぞれのスキルの習得度と実践度を細かく数値化し、この数値が上昇するとどんなメリットがあるのかを理解させることに努めた。また、各部門の長を立候補制にするなど、社員の自立性を尊ぶ会社の理念の徹底化を図った。

 

■取り組みの成果

多能工化の成功により、中抜けシフトの解消ができ、生産性、収益の向上につながった。また、社員が顧客と接点を持つ機会が増えたことで、「顧客満足度と利益の両立」というビジョンが全社員を深く浸透させることができた。その結果、日本を代表するリゾートホテルチェーンという評価を得られるようになった。

まとめ

多能工化推進のためには業務の仕組み化多能工化を推進することで、業務量の偏りを解消し、幅広いスキルを習得することで生産性が向上し、同時に社員満足度も上がって社員定着率も高まります。特に人材難に直面する中小企業にとっては、多能工化がもたらす恩恵は非常に大きなものだということがいえます。

 

しかし、これまでご説明した通り、メリットと同時にデメリットもあるのが、この多能工化です。作業内容を可視化し、評価システムを見直し、業務へ影響を与えないように育成期間を短縮するためには業務の仕組み化が必須となります。業務効率を上げて働きやすい環境をつくり、業績アップと社員の待遇向上につながる、多能工化に向けて、ぜひ皆さんの会社でも仕組みづくりに取り組んでいってください。

 

 

清水 直樹

仕組み経営株式会社 

代表取締役

 

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