多能工化するデメリット
多能工化には大きなメリットがありますが、デメリットも事前に把握しておくことが必要です。育成・教育に時間が必要多能工化では社員に複数の業務を習得してもらうための時間と手間がかかります。当然、複雑な知識やスキルが必要な業務ではOJTなども行う必要もあり、育成時間は長くなります。このため、社員1人1人の適性を把握し、人材育成を長い目でみて計画的に行わなければなりません。
■管理者に豊富な経験が必要
多能工化による業務の効率化を実現するためには、適切なマネジメントが必須となります。管理者側が多岐にわたる業務内容全体を把握し、状況に応じた最適な人員配置をできなければいけません。また、社員それぞれには経験値やスキルにバラつきがあり、慣れ・不慣れの差が生じる可能性があることも念頭に置く必要があります。
■人事制度の改定が必要
多能工化に伴い、人事制度を改訂・整備する必要があります。これまでの単能工=スペシャリストとは異なる価基準を設けなければモチベーションの低下を招き、せっかく時間をかけて育成した多能工が早期離職してしまうといった事態も懸念されます。業務の幅に対する評価、それぞれの業務内における成果に対する評価など、貢献が正当に評価される人事制度の見直しが必要になります。
次の項目では、このようなデメリットを払拭し、多能工化のメリットを最大化する方法を説明していきます。
多能工化を適切に推進する方法
多能工化するための適切な手順には、次のようなステップがあります。
ステップ1.業務の棚卸しと課題の見える化
まず、全体の業務を洗い出して、各社員の業務量や業務内容を把握していくことが必要です。各部門の状況が把握できれば、社員の仕事量や業務の流れを知ることができます。
そのために、各部門で業務棚卸表を作り、部門の全業務を大分類、各自の作業単位を小分類として分けていきます。そして、業務棚卸表をもとに実際の作業時間を算出し、人手が不足しがちな業務を明確にしていきます。具体的な時間の算出が難しい場合は、社員が忙しいと感じる時間帯の負荷の高い作業を特定していきましょう。
ステップ2.スキルマップによる作業習熟度の定量化
次に、業務棚卸表の小分類をもとにスキルマップを作成していきます。スキルマップとは、社員1人1人の持っている、業務に必要なスキルの習熟度をマトリックス化した一覧表のことです。これによって、属人化している作業がないか、特定の誰かに業務が偏っていないかが可視化され、改善の必要性が明確になります。
ステップ3.業務の標準化、マニュアル化
多能工化するためには、業務が誰がやっても、ほぼ同じ成果が出るようにしていかなければなりません。つまり、標準化、マニュアル化が必要です。多能工化する業務を棚卸したら、それらについて、自社における標準作業を定義し、マニュアル化していきます。
ステップ4.多能工化の推進計画の立案・実行
スキルマップなどをもとに、想定した期間内で目指すべき計画を立案し、実際に多能工化へ向けた人材育成に取り組んでいきます。人材育成は「いつ」「誰が」「誰に」「なにを」「どのように」行うのかを明確にし、計画的かつ継続的に行う必要があります。進捗状況を誰もが把握できるように、星取表のようなもので可視化していきます。