NISAやiDeCoは富裕層・高齢者のニーズに合う?
「資産所得倍増プラン」で疑問に思うのは、「貯蓄から投資へ」移行させたいのはどの層なのか? ということです。貯蓄額が多く、老後資金に余裕のある富裕層や高齢者層だとしたら、NISAやiDeCoという投資対象はニーズに合うでしょうか? 矛盾はないでしょうか?
いわば、NISAは公的年金の補完的制度であり、iDeCoは従来の退職金制度を補完する制度です。公的年金や勤務先からの退職金だけでは生活保障として十分ではない人々が、将来の老後に備えるために生まれた制度のはずです。本来、富裕層や高齢者が対象ではありません。
では、「貯蓄から投資へ」移行させたい層が富裕層や高齢者でないとすると、どの層なのか? 前頁掲載の総務省統計局のグラフをみると、50歳以降で貯蓄現在高は負債現在高を上回りますが、49歳以下では住宅ローンや教育ローンなどの負債現在高が上回ります。将来の老後に備えたくても、投資へ転換する十分な貯蓄がないというのが現実ではないでしょうか。
この矛盾を埋めるかのごとく、2022年7月、日本証券業協会は「中間層の資産所得拡大に向けて~資産所得倍増プランへの提言~」を提案しています。また、令和5年度税制改正要望として、2022年8月、金融庁は「資産所得倍増プラン」に関して以下を要望しています。
■NISAの抜本的拡充【所得税】
・制度の恒久化
・非課税保有期間の無期限化
・年間投資枠の拡大等
■金融所得課税の一体化【所得税】
■資産の世代間移転の円滑化【贈与税】
・教育資金一括贈与制度の拡充等
■資産形成促進支援【法人税】
・資産形成促進に関する費用に係る法人税の税額控除の導入
・職場つみたてNISA奨励金が「賃上げ促進税制」の対象となる旨の明確化
■マイナポータルを利用した投資環境整備
・NISA口座へのマイナポイント付与の検討
・NISA/iDeCoの口座開設一元化の検討
相続税専門の税理士として上記で注目するのは、資産の世代間移転の円滑化【贈与税】です。資産を高齢者に偏らせず、子世代の貯蓄を補って投資を促すだけでなく、生前贈与がスムーズになれば相続の不安が減ります。特に6人に1人が認知症というこの高齢者社会では。
それにしても、なぜ岸田政権は、そこまで「投資」にこだわるのでしょう?
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