※画像はイメージです/PIXTA

買収された会社の行く末は必ずしも悪いものではありません。買い手選びを慎重に行えば、これまでより待遇がよくなる可能性もあります。しかし買い手企業によっては、悪い方向へと進む場合も。みていきましょう。

高齢などが理由のM&Aの場合、社長は引退

M&Aを実施する理由の一つに、事業承継があります。高齢の社長であれば、後継者へ会社を譲り引退したいと考える人もいるはずです。一方、社長が引退せず、M&A後も事業に関わり続けるケースもあるでしょう。

 

引き継ぎ後に会社を離れる

事業承継のためにM&Aを実施した場合、社長は引退するのが一般的です。引き継ぎに必要な期間は会社にとどまり、事業に必要な知識やノウハウ・取引先などの引き継ぎやサポートを実施します。目安として6カ月~1年ほど引き継ぎにかけるケースが多いでしょう。各種引き継ぎが完了したタイミングで引退できるよう、徐々に仕事から手を引いていきます。

 

社長が会社に残るケースとは

資本力のある企業の下で事業を拡大したい、といった目的でM&Aを実施するケースでは、社長が引き続き会社に残るケースも多々あります。買い手側も、経験者である社長の積極的な参加を望んでいるはずです。買い手と報酬について交渉し社長として残る場合もあれば、特定の部署の責任者として『取締役OO部長』といった肩書で事業に携わる場合もあります。

 

売却後に起こりうる問題

順調に会社を売却できたとしても、そこで安心してはいけません。売却後に問題が発生するケースもあるからです。簿外債務の発覚や損害賠償請求など、起こりうるトラブルについて知っておかなければいけません。

 

労務管理の不備、簿外債務の発覚

M&A実施後に『未払残業代』や『有給休暇の未消化』などの問題が発生した場合、売り手は全てを把握した上で労務管理の不備や簿外債務を隠していたと、買い手から判断される可能性があります。残業代も有給休暇も、経営者であれば当然把握しておくべき項目です。それを把握していないという主張はまず認められないでしょう。中小企業では、労務管理や簿外債務の問題は比較的多く見られます。そのため交渉の初期段階に行われるトップ面談や、買い手が実施する詳細な調査であるデューデリジェンスで発覚する分には、それほど大きな問題になりません。

 

ただし契約後にこれらの問題が発覚すると、発生するコストの負担を求められます。対応に手間も時間もかかる事態です。

 

損害賠償請求される可能性も

契約書に労務問題や簿外債務について『表明保証』の条項を設けていると、契約締結後の問題発覚で、損害賠償請求の対象となる可能性があります。表明保証は特定の内容に間違いがないことを表明し、その内容を保証する条項です。加えて補償条項が設けられていると、表明保証違反によって買い手が被った損害・損失に関する損害賠償を請求されるでしょう。実際にM&A実施後に問題が発覚し、損害賠償請求の訴えを起こされたケースもあります。

 

買い手と良好な関係性を築きしっかり交渉を

買収された会社の末路というと、社員のリストラを心配する経営者もいるかもしれません。しかしM&Aを理由にしたリストラはできないことに加え、買い手にとって社員は貴重な即戦力の人材です。特に株式譲渡は会社を丸ごと譲る手法で、社員の雇用も原則として継続されます。事業譲渡では雇用契約を結び直さなければいけないため、条件にはくれぐれも注意しましょう。

 

交渉する上で良好な関係性を築くには、会社の状況を正しく伝えることが重要です。労務管理や簿外債務といった問題についても伝えます。正確に把握しきれていない問題があるなら、専門家に相談してもよいでしょう。

 

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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