※画像はイメージです/PIXTA

買収された会社の行く末は必ずしも悪いものではありません。買い手選びを慎重に行えば、これまでより待遇がよくなる可能性もあります。しかし買い手企業によっては、悪い方向へと進む場合も。みていきましょう。

役員は「残る」か「退職」か、ケースバイケース

社員はM&A後も雇用が継続されるのが基本です。しかし役員の場合、残るか退職するかは採用する手法や本人の意思によって異なります。

 

株式譲渡では役員として残ることができる

M&Aを『株式譲渡』で実施した場合、ただちに役員が解任されることはありません。役員の解任は『自主的な辞任』『任期満了による退任』『株主公開決議による解任』の3種類です。そのため売り手企業が買収された後も、役員として残れます。ただし株式譲渡を実施した買い手企業は、株式の過半数を取得しているため、株主総会の決議により役員を解任されるかもしれません。

 

経営者とともに退職することもできる

役員は自主的な辞任によっても退職できます。本人の希望によっては、経営者と同じように退職する選択も可能です。創業期から経営者と二人三脚で歩んできた役員は、退職を選ぶケースもあるでしょう。

 

ただしM&Aの条件として、役員が一定期間在籍する『キーマン条項』を設けるケースがあります。その場合キーマンである役員に自主退職をされると、買い手に不都合が出るかもしれません。M&Aの金額にも影響を及ぼすため、基本合意締結後など早い段階で今後の姿勢を確認する必要があります。キーマン条項を求められるかどうかは、買い手の状況により異なります。売り手企業と同業種の買い手であれば、社員への降格や退職を求められるかもしれません。

事業譲渡の場合

売り手企業を丸ごと全て引き継ぐ株式譲渡に対し、事業譲渡は引き継ぐ事業・資産・負債などを選択できる手法です。社員との雇用契約も自動的に引き継がれることはなく、個別に契約し直します。

 

買い手の定めた条件で働くことになる

事業譲渡では株式譲渡のように、社員がそのまま引き継がれることはありません。そのため買い手が『雇いたい』と考える社員とは、個別に雇用契約を締結します。新たに雇用契約を結ぶため、売り手企業で働いていたときより条件が悪化する可能性も考えられるでしょう。雇用条件は買い手企業によって定められるため、働き続けるにはその条件を承諾する必要があります。

 

退職金に関する変更については要確認

退職金についてもよく確認しておかなければいけません。事業譲渡では雇用契約を買い手と結び直すため、雇用条件が変わります。買い手の雇用条件によっては、退職金制度がない可能性もあります。制度自体はあるとしても、勤続年数がリセットされ、退職時に受け取れる金額が減るケースもあります。中には売り手企業の勤続年数分の退職金が引き継がれるケースもあるでしょう。同じ事業譲渡でも買い手によって対応はさまざまです。あらかじめ確認しておくことで、トラブルを未然に防げます。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

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