(写真はイメージです/PIXTA)

2020年4月1日より、残業代請求の時効が従来の2年から3年へと改正されましたが、今後さらに5年に伸びる可能性もあるといわれています。これにより、未払い残業代のある企業のリスクがより高くなっています。今回は、未払い残業代請求への対策について、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。

 

未払い残業代のリスクへの「予防策」

未払い残業代が発生している以上、従業員の誰かから未払い残業代の請求がなされるリスクを常に抱え続けることになります。また、残業代の未払いが常態化している企業では従業員の定着もしづらく、頻繁な新規採用が必要となることでむしろコストがかさんでいる可能性もあるでしょう。未払い残業代のリスクを抱えないため、次の予防策を講じておくことをおすすめします。

 

就業規則を整備する

就業規則はあるものの、どこかから引っ張ってきたテンプレートを基に作成しただけで、経営者さえ内容をよく把握していないという企業が散見されます。しかし、就業規則は、従業員との雇用契約のベースとなる非常に重要な取り決めです。弁護士とともに自社の就業規則を改めて確認し、自社の雇用ルールを把握しておきましょう。

 

そのうえで、自社の残業実態に合った就業規則へつくり変えることも検討すべきです。たとえば、特定の期間のみ忙しくなり残業が増えているような企業では、変形労働時間制など適切な制度を採用することなどにより、適法に残業代を抑えられる可能性もあります。

 

労働時間をきちんと管理する

従業員の労働時間が適切に管理できていなければ、適切な残業代を支払うことは困難です。従業員から未払い残業代を請求された際、自社に労働時間に関する記録が残っていなかったとしたら、従業員の独自のメモどおりに残業代を支払わざるを得ない可能性もあります。

 

労働時間の適切な把握は、従業員を雇用する企業にとっての義務といえます。タイムカードの導入やアクセスログの記録など、労働時間を把握する仕組みの整備が必要です。なお、残業代計算の基となる労働時間は、1分単位で計算することが原則です。15分未満や30分未満の時間を切り捨てているケースも散見されますが、これは違法となる可能性が高い(日々の未払い残業代が積み重なっていく可能性が高い)ため、注意しましょう。

 

従業員とのコミュニケーションを円滑にしておく

ある日突然従業員から未払い残業代を請求されないようにするためには、日頃から従業員とのコミュニケーションを円滑にしておくとよいでしょう。当然ながら、コミュニケーションが円滑だからといって残業代を支払わなくてよいわけではありません。しかし、少なくともいきなり労働基準監督署にかけ込まれたり、突然従業員間で徒党を組んで数年分の未払い残業代を請求されたりするリスクは下げることが可能となります。

まとめ

未払い残業代を請求されたら、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。未払い残業代があると認められる場合は、任意交渉による早期解決が望ましいからです。労務問題に詳しい弁護士は残業代請求の事例を多く経験しているため、未払い残業代請求についての交渉事例が蓄積しています。

 

また、弁護士が交渉に立ち会うことで、残業代の未払いについてだけではない不当な要求をされる事態を避けることもできるでしょう。無理に自社で対応してしまうと、不用意な発言をしてしまうなどして不利となる可能性があるため注意が必要です。

 

残業代の時効は、改正によって2年から3年へと伸長されました。未払い残業代の請求は企業にとっての大きなリスクとなります。残業代の未払いが生じてしまうことのないよう、あらかじめ労務管理を徹底しておきましょう。

 

 

西尾 公伸

Authense法律事務所

弁護士

 

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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